石川県七尾美術館のビーズ展
昨年10月の国立アイヌ民族博物館におけるビーズ展に引き続き、今度は石川県七尾美術館で「ビーズ―つなぐ・かざる・みせる」というタイトルの特別展が開催されています(会期:7月30日~9月11日)。民博では巡回展に位置づけていますが、地元出土の考古資料や長谷川等伯の仏画(複製)なども展覧に供されています。いわば民博と七尾美術館の共同展示といっても良いでしょう。展示室3室に加え、廊下やロビーにも関連のポスターや配付資料などがあふれていました。
今回の特別展には七尾美術館と民博に加え千里文化財団も主催者に名を連ねています。そのためわたしも開幕式の挨拶に立ち、テープカットにも参加しました。そこで話をさせていただいたことのひとつは、日本海の沿岸をむすぶ縄文文化や祭礼のことでした。縄文文化としては環状列石や環状列柱が点在すること、その一例として富山湾の北にある真脇遺跡の環状木柱列に言及しました。他方、祭礼としてはいわゆる風流灯篭の連鎖があり、能登のキリコもそのひとつであるが、実は輪島のキリコが民博にも収蔵されていること、また民博のエントランスホールでそれがしばらく展示されていたことも紹介させていただきました。
七尾は長谷川等伯の出身地であり、JR七尾駅前には青雲の志を抱いて京に旅立つ銅像が建っていました。平成7(1995)年に開館した石川県七尾美術館も等伯とそのコレクションなくしては存在しえなかったことでしょう。等伯の国宝「松林図屏風」の展覧会のときには2週間で5万人を越える観覧者があったと、ビーズ展を担当された北原洋子学芸員にうかがいました。「松林図」は水墨画ですが、今回のビーズ展ではカラフルな仏画にみられるビーズの装飾が目をひきました。
のと里山里海ミュージアム
のと里山里海ミュージアムは4年前の2018年に開館した新しい施設です。能登半島、とりわけ七尾湾を中心とした里山と里海の密接なつながりを示し、環境保全と歴史的・文化的魅力を伝える体感型ミュージアムです。「能登の里山里海」は2011年に世界農業遺産に認定され、以来、里山里海の利用保全活動が活発に展開されています。その拠点のひとつがこのミュージアムであり、どのような展示をしているかに関心をいだきました。もうひとつは、ここの学芸員さんがかつて民博のビーズ展(2017年)の関連イベントに参加されたという話を北原学芸員から聞いたからでした。急なことでしたが、さいわい床坊睦美学芸員にお会いすることができ、そのうえ展示場の案内までしていただきました。
「里山里海」は学術的というより行政主導の用語ではありますが、能登半島ならではの自然環境に根ざした概念として発展途上にあります。それは賛否こもごもの山風・海風に磨かれることで、能登の過去・現在・未来をつらぬく有効な概念となる可能性を秘めています。今後、ノトロジー(能登学)の展開にどうつながるか、その推移をやや遠くから静かに見守ってゆきたいと思っています。 (2022年7月4日)
写真は上から、
写真001 ビーズ展のチラシ
写真002 開幕式のテープカット
写真003 長谷川等伯の銅像「青雲」
写真004-005 長谷川等伯の仏画(複製)等:左から「十三仏画像」、「複製日蓮聖人像」、「複製日天像」羽咋市・正覚院蔵
写真006 床坊睦美学芸員と