このたびの台風15号ならびに台風19号による被害は東海、関東、甲信越、東北の諸地方を中心に全国の広範囲におよび、おおくの犠牲者をだしたばかりか、その復興も遅々としてすすまない状況がつづいております。罹災者には心よりお見舞いをもうしあげますとともに、1日もはやく安心・安全の日常生活をとりもどされることをねがうばかりです。
日本列島は太古より自然災害の頻発するところではありましたが、近年、想定外と称される各種の災害におそわれるようになりました。それにたいし、防災はもとより、減災や縮災、あるいはダメージ・コントロールといった概念がしばしばつかわれ、さまざまな対策と対応が講じられています。ハザードマップ、緊急避難情報、指定避難所など、かぞえあげればきりがありません。
人類と災害の歴史をふまえ、昨今のような甚大な被害に遭遇すると、自然と人間との関係をあらためて問う必要性を感じます。人類はずっと自然と共生しながら暮らしてきましたが、しだいに自然を克服する方向にむかい、今度はその自然に逆襲されるかのような事態に直面しています。
梅棹忠夫は人類の歴史を「生態系から文明系」というテーゼで解き明かそうとしました。人間=自然系から人間=装置系(制度系)と言い換えてもいますが、わたしはその先に、文明=生態系とでも言うべき課題が人類を待ち受けているのではないかとかんがえています(注)。
ふりかえれば昨年、国立民族学博物館は6月18日に大阪府北部地震に見舞われ、3カ月の休館を余儀なくされました。9月4日には台風21号の直撃を受け、千里万博公園の木々がつぎつぎになぎたおされました。今回の台風・洪水被害も他人事とはおもえません。あらためて弔意を表し、お見舞いをもうしあげる次第です。(2019年10月24日)
【注】
拙稿「『生態系から文明系』再考―谷口国際シンポジウム『文明学部門』の遺産」比較文明学会30周年記念出版編集委員会編『文明の未来―いま、あらためて比較文明論の視点から』東海大学出版会、2014年、35-36頁。