2024年10月26日(土)開催の日本万国博覧会記念公園シンポジウム2024「協働・共創の万博をめざして」につき、当日の講演、パネルディスカッションの様子をおさめた動画を公開しました。
【SENRI COLORS】 国立民族学博物館(みんぱく)公開のお知らせ
YouTubeチャンネル「千里万国春」に【SENRI COLORS】 国立民族学博物館(みんぱく)が公開されました。
「千里万国春」は、日本初のニュータウン「千里ニュータウン」の魅力を映像で発信するメディアで、千里で地域に開かれた活動をしているグループ、団体、組織などを紹介していくインタビュー動画シリーズを順次、撮影・公開しています。
このたび、国立民族学博物館、同友の会の紹介が、民博教授 山中由里子先生のインタビュー動画でおこなわれています。ぜひ、御覧ください。
理事長徒然草(第21話)
「ウポポイ再訪―『驚異と怪異』の特別展示に寄せて」
2021年にウポポイ(民族共生象徴空間)にある国立アイヌ民族博物館で「ビーズ アイヌモシリから世界へ」(第3回特別展示)の内覧会と開幕式に立ち会って以来、3年ぶりに北海道を訪れました。今回もまた民博の巡回展でもあるアイヌ博の「驚異と怪異 想像界の生きものたち」(第9回特別展示)の内覧会に出席するためでした。千里文化財団は両館をつなぐ役割を担っており、主催者のひとつとして名を連ねているからです。
アイヌ博の「驚異と怪異」展は2024年9月14日(土)からはじまり、11月17日(日)までを会期としています。展示は二部構成をとり、「想像界の生物相」と「想像界の変相」に分かれ、前者は①水、②天、③地、ならびに④驚異の部屋の奥へ、と続き、後者は⑤聞く、⑥見る、⑦知る、⑧創る、のコーナーから成り立っています。民博の特別展「驚異と怪異」(2019)とは構成が異なるだけでなく、北海道ならではの資料が数多く展示されていました。たとえば、「ビビちゃん」の愛称で親しまれ、チラシにも使用されている動物形の土製品が目をひきました。(上掲チラシ、左)「ビビちゃん」は新千歳空港建設時の美々(びび)4遺跡に由来し、その謎めいた文様が見る人の想像力をかきたてます。また、フキの葉の下にいるという小人「コロポックル」の伝承もとりあげられています。かつて人類学界ではコロポックルをアイヌとも和人とも異なる日本列島の先住民だとする学説が論争を巻き起こしたことがありました。いまでは否定されていますが、フキの下の小人は学説史の上で有名となり、のちに妖精に見立てたグッズが観光土産店に並ぶようになりました。他方、「人を喰う」というウエクル(ルは小文字)という存在にも出くわしました。出口に近い⑧創る(コーナー名)に白老出身のイラストレーター、山丸ケニ氏による恐ろしくもあり、威厳もある、人を喰うだけのことはあるウエクルの作品が多数展示されていました。
「驚異と怪異」の巡回展はこれが4回目です。最初は兵庫県立歴史博物館(2020年)で、当時流行していたアマビエの実物資料(京都大学図書館蔵)の展示が人気を博しました。2回目は高知県立歴史民俗資料館(2022年)、3回目は福岡市博物館(2023年)で四国と九州に渡りました。そして今年、ついに津軽海峡を越え、「渡(と)道(どう)」を果たすことができました。
「渡道」と言えば、ふつう本州から北海道に渡ることを意味し、わたし自身も開拓民の調査を50年も前におこない、修士論文にまとめたことがありました。それは常呂町(ところちょう)(現在は北見市に合併)における寺院の成立と展開を中心に据えたものでしたが、今回の「渡道」でも同地に足をのばしてみました。常呂町はいまではカーリングの町として有名になりましたが、かつてはオホーツク文化や擦(さつ)文(もん)文化の遺跡の町として知られていました。サロマ湖畔には「ところ遺跡の森」が整備されていて、今回も「ところ遺跡の館」や「ところ埋蔵文化財センター」を再訪しました。後者ではたまたま北海道の埋蔵文化財職員の研修会をおこなっており、わたしも請われて「驚異と怪異」展の簡単な紹介をさせていただきました。研修の担当者からは「ビビちゃん」のイラストが入った名刺を差し出され、それが北海道の埋蔵文化財を代表する資料(国指定重要文化財)のひとつであることを逆に認識させられました。
また、ところ埋蔵文化財センターでは言語学の服部四郎氏(当時、東大文学部教授)とともに、そのインフォーマントだった樺太アイヌの引揚げ者である藤山ハルさんが展示コーナーで顕彰されていました。わたしも常呂に滞在中、藤山ハルさんから何度か話を聞いたことがあり、お葬式にも立ち会ったことをなつかしく思い出しました。(2024年10月1日)
求人: 職員募集要項
公益財団法人千里文化財団 職員 募集要項
別紙「募集要項」のとおり職員を募集します。
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- 職務内容:編集業務(校閲校正作業、進行管理、レイアウト、原稿作成、取材、撮影、企画含む)等
例)『季刊民族学』、図録類 他 - 採用人数:1名 ※試用期間3ヶ月
- 資格等:
大学を卒業した方。上記の編集業務経験が5年以上ある方。
博物館支援、一般市民を対象とした広報普及活動に関心がある方。
DTPソフトの実務経験をお持ちの方が望ましい。 - 労働条件等
(1) 勤務時間:午前9時00分〜午後5時30分 ※休憩60分含む
(2) 月給:200,400円〜 ※経験及び能力を考慮の上、決定
※ 試用期間3ヶ月
(3) 通勤手当:25,000円を超える場合は、41,000円まではその2分の1を加算する(上限支給額 33,000円)
(4) 社会保険適用(雇用保険、労災保険、健康保険、厚生年金保険)
(5) 休日及び休暇:週休2日、国民の祝日、年末年始休暇(12/28〜1/4)、有給休暇
(6)勤務先:当財団事務所(国立民族学博物館3階)、但し、取材等外部での業務もございます。
※その他労働条件については、当財団就業規則等による。 - 応募方法:下記まで履歴書(写真付き)及び職務経歴書をお送りください。
書類審査をおこない、2次審査の面接日程をお知らせいたします。 - お問い合わせ先:公益財団法人千里文化財団 総務・財務グループ 採用担当
〒565-8511 大阪府吹田市千里万博公園10-1 (国立民族学博物館本館3階)
TEL: 06-6877-8893 e-mail: メール総務・財務グループ
- 職務内容:編集業務(校閲校正作業、進行管理、レイアウト、原稿作成、取材、撮影、企画含む)等
理事長徒然草(第20話)
シンポジウム2023「『日本人』の内と外―異文化接触を語り合う」をふりかえって
2023年10月28日(土)午後1時30分から4時30分にかけて、日本万博記念公園シンポジウム2023「『日本人』の内と外―異文化接触を語り合う」が国立民族学博物館のみんぱくインテリジェントホール(講堂)で開催されました。当財団が主催し、大阪府と国立民族学博物館が共催し、大阪大学、大阪日本民芸館、大阪モノレール、関西・大阪21世紀協会、万博記念公園マネジメント・パートナーズが協力に名を連ね、2025年日本国際博覧会協会、吹田市、NHK大阪放送局の後援を得ました。会場の聴衆は111名、オンラインの視聴者は74名でした。
開催にあたり、わたしのほうから主催者挨拶として、3回目の万博記念公園シンポジウムであること、ならびに3名のゲストの紹介をしました。また、目下ライブ配信をおこなっているが、いずれYouTubeで公開すること、さらにシンポジウムの内容は『季刊民族学』188号において今春4月に掲載予定であることにも言及しました。
登壇者は吉田憲司氏(国立民族学博物館長)、橋爪節也氏(大阪大学名誉教授)、井上章一氏(国際日本文化研究センター所長)、ウスビ・サコ氏(京都精華大学全学研究機構長)の4名でした。まず吉田館長が「シンポジウム開催にあたって」という発題をし、それを受けて3名の演者がそれぞれの立場から以下のような講演をおこない、休憩をはさんでパネルディスカッションとなりました。
「大阪と博覧会イメージ―成功体験はくり返すか、第5回内国勧業博からEXPO‘70へ」(橋爪)
「京都と万国博覧会」(井上)
「万博でアフリカから何が学べるのか?」(サコ)
ここでは印象に残ったいくつかの点について記しておきたいと思います。まず吉田館長が、日本がオリンピックと万博をセットとして開催してきたことの意義をふりかえり、万博がきっかけとなって世界を広く見渡す博物館が主催都市に創設されてきたことに言及しながら、本シンポジウムのねらいについて述べられました。それを受け、橋爪氏は8つのキーワードをとりあげ、大阪における博覧会イメージの変遷について語りましたが、『20世紀少年』(浦沢直樹)の世代でありながら、なぜ大阪で『20世紀少年』のような作品が生まれなかったのかを時に反芻しておられるのが印象的でした。また、新しい研究として佐野真由子編『万博学―万国博覧会という世界を把握する方法』(思文閣出版、2020)を紹介しながら、植民地的支配から脱した独立国の増加が70年大阪万博を支えたことに目が開かれたと結ばれました。次に登壇された井上氏は70年万博が終わったあと、ディスカバージャパンのキャンペーンで京都を訪れた女性客、とくに若い女の人の一人旅をとりあげ、個人的体験も交えながら、京都観光の「デオドラント化」についてユーモアたっぷりに話題を提供されました。最後の報告者であるサコ氏は、京都と母国マリを主に比較しながら、空間のもつ社会性に着目され、「鴨川等間隔の法則」と名づけた距離のとりかた等を例に日本人の内と外の問題を論じられました。万博との関連に関しては、多様性を認め合い、ステレオタイプの観念をなくす機会として重要な意義をもつと指摘されました。
パネルディスカッションでもさまざまなアイデアが飛び出し、活発な議論が絶え間なく繰り広げられました。ファシリテーターをつとめた吉田館長は結びのことばとして、「それぞれの集団にはそれぞれのやり方がある」とザンビアのチェワ人の友人に言われたことを想起し、民族や宗教の違いだけで対立は起こらないと述べ、多様性を尊重した付き合い方をする場として、万博のもつ意義をあらためて強調されました。
付記:
現在、本シンポジウムの動画はYouTubeで配信中です。
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