122号 2007年 秋

機関誌
カーブルの旧市街、1955年
文/写真・梅棹忠

梅棹忠夫と民族誌写真

写真・解説=梅棹忠夫

梅棹忠夫の思想、学術研究の礎には、現地調査が存在する。具体的な現地調査から得られた論理であるからこそ、人びとを魅了し、その知的要求にこたえづづけるのである。現地調査による学術成果、探検を通して導かれた思想は、これまで多くの著作として発表されてきた。一方、調査において、世界の諸民族の生活を撮影した写真は膨大で貴重であるにかかわらず、まとまったかたちで接する機会は限定的である。本特集では1955年の京都大学カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊に参加して以来、世界各地のフィールドワークを実施してきた梅棹忠夫による膨大な写真資料から40点余を厳選し、本人による解説とともに紹介する。

1981年 内蒙古
1982年 モンゴル
インタビュー(1) 民族誌写真とは
1955年 アフガニスタン 京都大学カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊
1955年 インド 京都大学カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊
1957年・58年 タイ 第一次大阪市立大学東南アジア学術調査隊
1958年 ベトナム 第一次大阪市立大学東南アジア学術調査隊
1957年・58年 カンボジア 第一次大阪市立大学東南アジア学術調査隊
1958年 ラオス 第一次大阪市立大学東南アジア学術調査隊
1961年 ビルマ 第二次大阪市立大学東南アジア学術調査隊
1961年 ネパール 第二次大阪市立大学東南アジア学術調査隊
1967年 スペイン 第一次京都大学ヨーロッパ学術調査隊
インタビュー(2) フィールド調査と写真
1968年 リビア 京都大学サハラ学術調査隊
1969年 イタリア 第二次京都大学ヨーロッパ学術調査隊
インタビュー(3) 学術と映像
1979年 中国・雲南省 日本民族学者訪中代表団
1979年 中国・貴州省 日本民族学者訪中代表団
1980年 中国・新彊ウイグル自治区
1980年 中国・上海特別市 日本学術振興会訪中団
1982年 中国・チベット自治区
1983年 中国・新彊ウイグル自治区
1984年 中国・寧夏回族自治
インタビュー(4) 『季刊民族学』の使命
梅棹民族学の軌跡をたどるリーディングガイド

朝メシ前の人類学
フィールドでうまれる対話 第3回
コーヒーに誘われたんですけど、行っていいですか?
文・松田 凡 写真・水井 久貴
絵・中川 洋典

海人万華鏡第9回
海とともに生きる浜士
living a life of salt
文・あん・まくどなるど
写真・礒貝 浩

朝食に暮らしあり9
とれたての生肉を分かちあう団欒のひととき
礒貝 日月

大インダス世界への旅 第2回
紛争地カシミール

船尾 修

聖山カン・リンポチェ北側を源流とする大河インダスはヒマラヤ山脈の北面に沿って西進、小チベットの異名をとる信仰の地ラダックに流れこむ。ラダックのすぐ隣は、60年間におよぶインド・パキスタン間の領有争いで現在も揺れつづけている紛争地カシミールである。2005年、この地域で大地震が発生し、8万人近くの人命が失われた。紛争地、観光地、そして被災直後のカシミールを歩く。

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

【地域(国)】
東アジア(日本、中国)
東南アジア(タイ、ベトナム、カンボジア、ラオス、ビルマ)
南アジア(アフガニスタン、インド、ネパール、パキスタン)
中央アジア(モンゴル)
北アフリカ(リビア)
東アフリカ(エチオピア)
西ヨーロッパ(イタリア、スペイン)

121号 2007年 夏

機関誌
山の神アプに発掘前の祈りを捧げる人びと
義井 豊

文化遺産との共生
ペルー・アンデス

写真・義井 豊

古代アンデス文明の遺跡の宝庫、ペルー。世界文化遺産への人気で近年いっそう注目を集める地だが、資金的基盤をもたない国には、保護・保全をめぐって観光や開発との両立など、さまざまな問題がある。地元住民は文化遺産とともに生きるためにどのような試みをおこなっているのか、調査をおこなう研究者はどのようにして力になっていけばよいのか。今年で五十周年を迎える日本の考古学調査団のあゆみをふりかえりつつ、文化遺産との共生のあり方を考える。

序章 文化遺産は誰のものか 発掘からの教訓
関 雄二

第1章 アンデス文明の源流をもとめて
井口 欣也

第2章 盗掘者の論理と発掘者の論理
関 雄二

第3章 クントゥル・ワシ遺跡と地元住民
加藤 泰建

日本の考古学調査50年のあゆみ
文・坂井 正人

第4章 文化遺産の開発と住民参加
関 雄二

朝食に暮らしあり8
モーターサイが運ぶ朝食とうわさ
高城 玲

大文字五山の送り火の都市人類学

文/写真・和崎 春日
写真・溝縁 ひろし

8月16日、京都の夜を照らす大文字五山送り火。その時空間には、さまざまな思惑をもった人びとが集まる。行事を執行する人に加え、盆行事として祈る人や、見物に来る人、それにあやかり商売やイベントをおこなう人。「民俗」と「風俗」がからみつき、それぞれの人にとっての「大文字五山送り火」となる。人を生かし、人に生かされる都市祭礼の様相をみる。

朝メシ前の人類学
フィールドでうまれる対話 第2回
あの肌の色がちがうオヤコ、見ました?
文・松田 凡
写真・水井 久貴
絵・中川 洋典

海人万華鏡第8回
定地網漁業とクラゲと気候変動のことなど 島根半島恵曇漁港の場合
with climate change
文・あん・まくどなるど
写真・礒貝 浩

再見細見世界情勢7
カンボジア内戦
歴史の検証と未来への展望
文・天川 直子

大インダス世界への旅
第1回 源流
チベットからラダックへ

船尾 修 西チベットにそびえる聖山カン・リンポチェ北側を源流とし、チベット、インド、パキスタンを通りアラビア海に達する大河インダス。流域の風土や民族には独自性と同時に「インダス世界」としての連続性が存在する。源流から河口へ向けての旅を縦軸に、そこに歴史という時間の流れを横軸として加味することにより、「インダス世界」の全体像が立体的に浮かびあがってくる。

書架はいざなう
文化人類学者を魅了する上質ミステリー
春日 直樹

本で会いましょう21
『南米キリスト教美術とコロニアリズム』
植民地政策と教会美術を通じて南米の高地と低地に共通性を見出す
齋藤 晃さん(インタビュー)

本棚
『河口慧海日記――ヒマラヤ・チベットの旅』
『さらばモンゴロイド――「人種」に物言いをつける』

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

【地域(国)】
東アジア(日本、中国)
東南アジア(タイ、カンボジア)
南アジア(インド)
東アフリカ(エチオピア)
南アメリカ(ペルー)

120号 2007年 春


ニューデリーの商業地域コンノート・プレイスにて
大村次郷

特集 インド社会の現在
もうひとつのFashioning India

写真・大村次郷

1990年代以降、急速な経済成長を続けるインド。従来のイメージを覆す、IT産業に象徴される映像が、いまやステレオタイプにまで昇華し氾濫している。一方、華やかな映像は、普通に暮らす人びとの実態、長い歴史のなかで培われた文化を覆い隠しているのではないだろうか。「インド社会の現在」について、さまざまな視野から考察し、実像に迫る。

 

キリマンジャロの人びと

辻村 英之

世界でもっとも多く飲用されている嗜好飲料のひとつであるコーヒーは、コーヒーベルトと呼ばれる、北回帰線と南回帰線のあいだの地域で生産されている。アフリカ大陸最高峰を誇るタンザニアのキリマンジャロ山も、そうしたコーヒー豆産地のひとつ。その山中にはチャガの人びとが住み、古くからコーヒー豆を主産物としてきた。ところが、政府からの補助金の打ち切り、流通の自由化とコーヒー豆の国際価格の低迷などにより、農家をめぐる状況はさまざまに変化しつつある。山の西側中腹に位置するルカニ村に暮らす人びとは、「コーヒー危機」からいかなる影響を受け、それをいかにのりこえようとしているのか。「女性産物」の役割や、生産者支援活動「フェアトレード・プロジェクト」とともに紹介する。

 

砂漠に暮らし、ラクダとともに生きる

常見 藤代

エジプト東方砂漠に暮らし、遊牧生活を営んできたホシュマン族。彼らの多くが町での生活に移行するなか、砂漠でラクダとともに遊牧生活を続ける女性、サイーダ。サイーダの生きざまと、彼女が語る砂漠で生き抜くための知恵を三年にわたってとらえた

【地域(国)】
南アジア(インド)
オセアニア(ヴァヌアツ)
東アフリカ(エチオピア、タンザニア)
北アフリカ(エジプト)

119号 2007年 新春


チベットへ向かうヤクの隊列
大谷 映芳

特集 河口慧海の道

河口慧海研究プロジェクト

およそ一〇〇年前、仏教の原典を求めてチベット、ラサ入りを果たした河口慧海。世界じゅうの探検家がなしえなかった偉業を達成した彼の足跡は、宗教人として、厳しい環境を克服する探検家として、さらに当時のネパール、チベット地域の風俗、暮らしを伝える地域研究の先駆者として現在もなお影響を与えつづけている。二〇〇四年に新たに発見された「日記」は彼の足跡の空白を埋め、さらに推論を裏づけるものであった。彼がとおった「道」を実際に踏破し、足跡の核心にせまる。

 

世界の歌と踊り

イラスト・栗岡奈美恵

世界には、その地ならではの背景をもち、人びとの心に訴えかけ、ときに感動させ、ときに涙を誘う歌や踊りがある。西北ベトナムの黒タイに伝わる恋愛叙情詩「ソン・チュー・ソン・サオ」、インドの国民歌「ヴァンデー・マータラム」、日本の「酒造り唄」、南タイの伝統舞台芸能「ノーラー」を取り上げ、歌と踊りの魅力を味わってみよう。

茶馬古道のいまをたずねて

鎌澤 久也

古来、茶馬古道という道があった。中国雲南省や四川省で採れたお茶を、チベットに運ぶルートを指すもので、起源は定かではないが、唐宋時代にはすでに開かれていたようだ。それはくしくも私がライフワークとしている、少数民族地域と重なっているところも多く、点在する街や村に幾度となく通った。そこで今回このルートのひとつを雲南省からチベットの首邑ラサまで辿ることで、現在の茶馬古道がどうなっているのか知ろうと思った。

【地域(国)】
東アジア(中国、日本)
東南アジア(タイ、ベトナム)
南アジア(ネパール、インド)