第63回体験セミナー巡礼(6) 四国遍路の成立をさぐる ─ ─阿波の霊場から

第63回体験セミナー巡礼(6) 四国遍路の成立をさぐる ─ ─阿波の霊場から

2011/11/12~2011/11/13

四国遍路といえば弘法大師ゆかりの霊場をめぐることを意味すると考えられがちですが、四国遍路は熊野信仰との関係、一宮信仰、山岳信仰、海の信仰などさまざまな要素が複雑にからまりあって今のような形で成立したということが指摘されています。

たとえば『今昔物語』や『梁塵秘抄』には聖といわれる民間宗教者が四国の海辺をまわりながら厳しい修行をする様子が描かれています。四国の外周部をまわるという現在につづく四国遍路の出発点には、こうしたプロの修行者の活動があったものと考えられます。

2日目の薬王寺や太龍寺など、厳しい修行のおこなわれた場所も訪ねます。 それぞれの霊場が弘法大師信仰と結びつけられてゆく過程や霊場がネットワーク化され、全体が弘法大師へと集約されてゆくまでについてもお話をうかがいます。四国遍路の起点である阿波の国で遍路の成立について考えます。

スケジュール
<1日目>霊場のネットワーク化
中世後期に阿波国一宮となった霊山寺(1番)、讃岐との交通の要所であった金泉寺(3番)拝観。 徳島県立博物館にて解説を聞きながら収蔵資料など閲覧。 本来の阿波国一宮の神宮寺、大日寺(13番)、常楽寺(14番)など拝観。

<2日目>海と山の修行の場としての霊場
鶴林寺(20番)、弘法大師が修行をした「阿国大滝嶽」と比定される太龍寺(21番)、海とのつながりや中世の熊野とも関わりのある薬王寺(23番)など拝観
※移動はすべて専用バスを使用。太龍寺ではロープウエィを使用。


第63回 四国遍路の成立をさぐる-─阿波の霊場から 実施報告

四国遍路の起点である徳島・阿波の霊場を訪ね、巡礼路が形成されてゆく過程についてさまざまな角度から考えました。じっさいにその地を目で確かめながら講師の話を聞いていると、川とかつての流通路の関係や山奥での聖の修行の場など、地理的、歴史的な要素がつみかさなって現在の遍路道に続いているのだということを実感しました。

参加者の感想を紹介します。

二神富子さん
私は四国の高知で生まれ育ったのでお大師(おだいっさん)はとても身近な存在でした。例えば村の井戸はおだいっさんの杖でチョンチョンと掘ったものだとか(中略)、ほんとうにそれを信じていておだいっさんはえらい人やなー、八十八ヶ所の寺もぜんぶ彼が作ったものだと単純に思いこんでいました。

今回の長谷川先生の話を聞いて、さまざまな聖たちの活動や辺地の生活、弘法大師信仰が複雑に結びついて今の形になったんだと少し解りかけてきました。 日本各地の巡礼の地を訪ねると必ず登場する修験道への関心もますます強まる一方です。


鶴林寺(第20番札所)にて


常楽寺(第14番札所)にて

第62回体験セミナー ネパール料理をあじわう ─ ”民族のるつぼ”ネパールの食文化にせまる

第62回体験セミナー
ネパール料理をあじわう ─ ”民族のるつぼ”ネパールの食文化にせまる

2011年7月9日(土)16時~19時半

ネパール料理と聞いてどのようなものを思いうかべますか? 約100ものカースト/民族によって構成される多民族国家ネパールでは、食文化も地域によってずいぶん異なっています。今回は家庭料理「ダールバート」と祭礼や祝事の料理「サマエバジー」を味わいます。(サマエバジーは特別メニューです。)ほかにもネパールから持ち帰ったグンドゥルック(乾燥させた発酵野菜)やロキシーという蒸留酒もご用意します。素焼き土器のおちょこ、パーラーはおみやげとして持ち帰りも可能です。料理を切り口にネパールの多様な文化にせまります。


第62回 ネパール料理をあじわう-”民族のるつぼ”ネパールの食文化にせまる 実施報告

ネパールが多民族によって構成されており、言葉から食事にいたるまでじつにさまざまであることや、水に対する意識と食事の準備、食べ方、台所の位置など食にまつわるお話をお聞きしました。

その後で先生がネパールから持ち帰ってくださったロキシー(蒸留酒)やグンドゥルックという乾燥させた発酵野菜を用いたスープ、ダールバートタルカリ(ふだんの食事)とサマエバジー(ネワール族のお祭りの食事)を味わいました。どのお料理もスパイスがきいていて味わい深く、とても好評でした。

お食事の途中ではバーンスリーという竹笛の生演奏のサプライズもあり、味覚だけでなく音楽も楽しみました。


上手に手でつまんで食べる方法も教えていただきました


バーンスリーの生演奏

第61回体験セミナー コタンを訪ねる ─ 白老・二風谷・静内

第61回体験セミナー コタンを訪ねる ─ 白老・二風谷・静内

2010年9月24日(金)~26日(日)2泊3日

白老、二風谷、静内など北海道南部のアイヌ文化に関わりの深い地域を訪ねます。北海道南部は、比較的大きなアイヌのコタン(集落)が存在したこともあり、アイヌの伝統文化継承の中心地です。

なかでも最終日に訪問する沙流郡平取町二風谷には、アイヌ民族に関わる遺跡、史跡、伝説などが多くのこされ、現在ではイオル(漁猟の場)の再生事業が進められています。そうした沙流川流域を散策し、萱野茂さんのコレクションを展示する資料館などを見学します。資料館は多くの文化財があるだけでなく、地域別のアイヌ衣装の展示や海外の民族資料と比較しながら見学できる点も見どころです。

また、蝦夷三官寺のひとつである有珠善光寺に伝わるアイヌ語訳を併記した念仏の版木(重要文化財)なども特別に見せていただき、アイヌと和人(日本語を話す人)の歴史について考えてみます。 9月末は鮭の遡上シーズンですが、アイヌの人びとにとっては新しい鮭(アシリチェップ)を迎える大切な季節です。二風谷では特別にポロチセ(伝統的家屋)の中で鮭や秋の食材を用いたアイヌの伝統的なお料理をいただきます。

1日目 9/24(金)
松前藩との歴史について学ぶ 支笏湖にて昼食後、蝦夷三官寺のひとつ有珠善光寺拝観、伊達市噴火湾文化研究所見学

2日目 9/25(土)
白老アイヌ民族博物館へ 白老陣屋、アイヌ民族博物館見学後、アイヌの伝統料理の昼食、シャクシャイン記念館(静内)見学

3日目 9/26(日)
萱野茂さんの暮らした二風谷へ 平取町立アイヌ文化博物館、萱野茂二風谷アイヌ資料館見学後、ポロチセ内でアイヌの伝統料理の昼食、平取ダムや沙流川流域の散策


第61回 コタンを訪ねる-白老・二風谷・静内 実施報告

初秋の道南でのセミナーはお天気にも恵まれ、鮭の遡上も見ることができました。講師の佐々木利和先生の「『研究』とかいうことではなく、できるだけ多くのアイヌの方々と話したりふれあってください」という言葉が印象的であったという参加者の多賀俊介さんの感想のとおり、訪問先ではさまざまな方からお話をうかがったり、伝統食をご用意いただくなど、大変貴重な体験ができました。

感想を紹介します。

わたしにとって今回の旅は、従来の断片的で中途半端な知識を一掃するところから始まった。佐々木先生の誘導でまずゆっくりと「物」の展示を見た後で話を聞くということを繰り返した事がまことに有効でありました。アイヌの人々が衣食を得た土地の感じを把み得た(もちろんわずかなものにすぎないだろうけれど、数百数千年の時の流れに比らぶれば・・)。でも、当地に拡がり生を営んだ数多の人々の、来し方行く末を相当に想起出来たように思います。佐々木先生によるアイヌ語読解がそれを促してくれました。幼時の、上下水道無し 停電あり 道に馬糞あり 薪割りあり・・・・・の自分の体験が、人々の生活感覚と”自然崇拝”に共鳴する助けにもなりました。
(N.S.さん)

松本勝博さんは句を寄せてくださいました。 夕空は七色八色鮭跳ねる 夕焼けの縄文の丘独り座す 北の大地の大自然の中で暮らしてきたアイヌの人びとの畏敬、調和、共生といった自然に対するかかわり方は、環境や資源の問題をはじめ、今日の世界が直面するさまざまな難問を解決してゆく上で教えられる点が少なくないことを実感しました。
(佐野滋さん)

アイヌ文化について学ぶというテーマでしたが、有珠噴火湾文化研究所では縄文時代貝塚の発掘現場(6000年前)や円空仏まで見せていただくなど数々のサプライズもありました。お世話になったみなさま、本当にありがとうございました。


白老のアイヌ民族博物館にて記念撮影


白老のアイヌ民族博物館にて解説を聞きながら見学


夕焼けの北黄金貝塚(発掘中の縄文遺跡も見せていただきました)


二風谷のチセ内でアイヌの伝統料理の昼食をいただく

第60回体験セミナー 〈定員に達しました〉  シリーズ巡礼(5)みちのくの祈り ─ 浄土からオシラサマ、宮沢賢治まで

第60回体験セミナー 〈定員に達しました〉 
シリーズ巡礼(5)みちのくの祈り ─ 浄土からオシラサマ、宮沢賢治まで

2010年5月4日~5月6日

みちのくの文化や信仰を知る上でスタートとなるのが奥州藤原氏。その歴史を丁寧に読み解きながら、みちのくの祈りの世界をめぐります。

今回の見どころのひとつは5月4日におこなわれる神事能と奇祭「哭き祭り」。小さなお祭りながら、どちらも信仰の原点が感じられるお祭りです。そのほか「遠野物語」にも描かれたオシラサマや宮沢賢治が文学作品をとおして表現しようとした世界まで、神と仏、そして自然が渾然一体となって形づくられたみちのくの信仰について学びます。

<訪問先>
中尊寺、毛越寺、観自在王院、正法寺、黒石寺、天台寺、成島毘沙門堂、遠野伝承園、宮沢賢治記念館ほか


第60回 シリーズ巡礼(5) みちのくの祈り-浄土からオシラサマ、宮沢賢治まで 実施報告

友の会創設以来の会員でもある大矢邦宣先生(平泉文化遺産センター館長、盛岡大学教授)のご案内で、平泉から北の天台寺まで桜吹雪の中、岩手を縦断しました。「岩手を好きにならないうちは岩手から帰しません」という大矢先生の言葉とウィットも交えた熱心な解説によって、みなさん、すっかり岩手の魅力の虜になってしまいました。まだまだ知られざる見所がありそうでした。

参加者の感想をご紹介します。

丹治進さん
「友の会」のセミナーへの参加は初めてでした。今回は特に観自在王院の「哭き祭り」と天台寺の観音様をはじめとする仏像が印象深かったです。「哭き祭り」は規模が小さいこともあり、観光イベント化されておらず、私の求めているお祭りのイメージにあう洗練されていないかわりに、まさに土着のお姿、土地の人びとの信仰心が直接伝わってきて感動的でした。

南條憲二さん
初日は1時間ほど早く平泉に着いたので、得をしたことがあります。平泉駅前の広場では「鹿踊り」を、また毛越寺の境内では女子中学生による華やかな「毘沙門神楽」を見ることができたのです。これらは、白山神社での「御神事能」や観自在王院の「哭き祭り」、かつて東京公演で観た毛越寺の「延年の舞」や「早池峰神楽(岳神楽・大償神楽)」などとともに、みちのくの祭事・儀礼の奥の深さを偲ばせるものでした。 無量光院の池では、アンコール遺跡の王の沐浴場スラ・スランや、スリランカのアヌラーダプラからシギリヤにかけて幾つかある巨大貯水場を思い出しました。金鶏山の彼方に沈む夕日が水面に映る光景を前にして、しばし至福の刻を過ごしました。


無量光院の池の跡(調査のために水がはられていました)
金鶏山に沈む夕日と桜吹雪をながめながら対岸へ渡っているところ


観自在王院にて野ざらしの仏像についての解説をうけているところ


日本一の茅葺き屋根の正法寺にて。
ご住職から説明をうかがいました

第59回体験セミナー 京都町家にくらす ─

第59回体験セミナー 京都町家にくらす ─

2010年3月13日(土)10:00~14:30

「おばんざい」をはじめ、京都の町中のくらしぶりを紹介した大村しげ。生活の記録者という自覚のもとに書かれた数多くのエッセイは、没後10年を経た今でも読み継がれ、「後の研究のために」のこされた生活道具一式は民博に寄贈されています。

京都の町中のくらしに受け継がれてきた「しまつ」をつける生き方を、京町家の杉本家住宅を訪ね、体験します。杉本家住宅は江戸から明治にかけての家屋や生活道具がよく保存されていることから京都市の有形文化財にも指定されています。

じっさいに文化財に暮らしながら町家文化を伝えるという活動についてもお聞きします。

<プログラム>
講演と杉本家邸内の説明「町家のくらし ─ 商人の精神息づく暮らし ─」
杉本歌子:(財)奈良屋記念杉本家保存会 学芸員・古文書調査主任

昼食 おばんざい


料理・解説 杉本節子:(財)奈良屋記念杉本家保存会事務局長、料理研究家

講演「記録者としての大村しげ ─ 「しまつ」の思想が語るもの」
横川公子:武庫川女子大学教授


第59回 京都町家にくらす- 実施報告

京町家、杉本家住宅にて開催したセミナーは、奈良屋記念杉本家保存会の学芸員杉本歌子さんによる邸内の解説から始まりました。部屋のしつらいひとつをとっても引き算の考えでシンプルにつくられており、季節や慶弔などを問わず臨機応変に対応できる工夫が凝らされているというお話しが印象的でした。

昼食におばんざいをいただいたあと、武庫川女子大学の横川公子先生に大村しげさんの生き方や思想を紹介していただきました。大村さんの「しまつ」の考え方や杉本さんの日々の暮らしから、京都という都市で培われた生活の伝統が、現代の私たちの生活にも何かヒントを与えてくれるという魅力をあらためて感じました。

参加者からの感想を紹介します。

佐野滋さん
伝統的な京の町家は、一言で言えば日々のくらしの総合芸術である、京都の町衆はそれを創出する“文化力”を何世紀にもわたってもちつづけて来たことを実感しました。

常田泰典さん
京都というと古いものを残すというように考えられがちですが、伝統を伝えるだけでなくその時々に応じて柔軟に対応し、新しいものも取り入れる進取の精神があるとよく言われます。杉本家の方々の活動にもその精神が生きていることを感じました。


大きな襖をスクリーンにして講義を聴きました


昼食にいただいたおばんざいの一部