第65回体験セミナー 鯨と人のくらしを考える ─

第65回体験セミナー 鯨と人のくらしを考える ─

2012/07/14~2012/07/15

人類は有史以前から、さまざまなかたちで鯨と関わってきました。鯨は食料としてだけでなく、燃料や資材などとして生活に欠かせない資源を供給してきました。近年は欧米人の考え方に基づく反捕鯨の主張が政治経済力を背景に世界中に広がる勢いで、鯨をめぐる議論は多様に、そして複雑になっているように思われます。同行講師の岸上伸啓先生は長年、イヌイットの生存捕鯨について研究されてきました。文化人類学の立場からの研究は、異なる時代、地域、文化における鯨と人との関わりについて複眼的に考える視点を提供してくれます。先住民と狩猟をめぐる議論も含め、鯨と人の歴史と今後について考えてみましょう。

今回訪問する高知県は、古式捕鯨から商業捕鯨の終末まで360年にわたって継続して捕鯨がおこなわれてきた土地です。捕鯨の盛衰とかつお・まぐろ漁業の関係など、鯨ぬきには高知の漁業、文化を語ることはできません。キラメッセ室戸 鯨館の元館長・多田運さんにご案内いただきながら、資料館や史跡を訪ねます。宿泊する室戸岬のホテルは太平洋の目の前。弘法大師空海の御厨人窟やジオパークに指定されている景観もあわせて楽しみましょう。

<1日目>
高知県立歴史民俗資料館にて展示見学とセミナー
セミナー「鯨と人の関わりの歴史」について
講師:岸上伸啓(国立民族学博物館教授)
資料館見学では学芸員の方の解説もお聞きします。
吉良川の町並み(伝統的な建造群)、室戸岬経由で宿へ

<2日目>
室戸市内の捕鯨関連史跡、キラメッセ室戸 鯨館の見学
多田 運氏(キラメッセ室戸 鯨館元館長)の案内で捕鯨関連
史跡を訪ね、土佐の捕鯨の歴史についてもお聞きします。
講師:岸上伸啓(国立民族学博物館教授)
多田運(キラメッセ室戸 鯨館元館長)

第64回体験セミナー 進化する日本酒造り ─ ─伏見から世界へ 

第64回体験セミナー 進化する日本酒造り ─ ─伏見から世界へ

2012年2月26日(日) 10:30~16:00

近年、日本だけでなく海外でも日本酒への人気が高まりつつあります。京都・伏見の老舗蔵元を訪ね、日本酒をとりまく現在の状況について学びます。

午前中は伏見の酒造りを考える上で欠かすことのできない御香宮神社で、伏見の歴史と水、酒造りについて三木善則宮司にお話いただきます。お昼は魚三楼にて京料理を味わいます。

午後からは月桂冠大倉記念館を訪ね、月桂冠総合研究所所長の秦洋二さんに最新の日本酒造りについてお話いただきます。杜氏の伝統の技と知恵を、最先端の技術を融合し、酒造りを進化させている老舗蔵元の取り組みについておうかがいします。また、月桂冠の海外展開の様子など、世界の中での日本酒についてもお聞きします。月桂冠がカリフォルニアで造っている日本酒も取り寄せていただくことになりました(日本では販売されていないものです)。飲み比べも楽しみたいと思います。お話の後には、記念館で伝統的な酒造りの過程を頭に入れた上で、最先端の酒造りの現場も特別に見せていただきます。

セミナーには「日本酒で乾杯推進会議」代表でもある石毛直道先生もご同行いただきます。春を間近に控えた京都・伏見で、おいしいお酒を味わいながら日本酒事情についてお話をうかがいます。


第64回 進化する日本酒造り-─伏見から世界へ 実施報告

石毛直道先生にご同行いただき、伏見の酒造りの今と昔を学びました。午前中は御香宮神社で三木善則宮司から伏見の歴史や文化財の保存・継承について興味深いお話をうかがいました。

午後からは月桂冠大倉記念館を訪ね、月桂冠総合研究所所長の秦洋二先生から、酒造りの歴史と発展、現在の研究についてなどのお話をうかがいました。さらに大型機械を用いた現在の酒造りの現場にも特別にご案内いただきました。ほかにも秦先生のはからいでカリフォルニア産の日本酒を味あわせていただいたり、石毛先生から世界のお酒についてお話を聞くなど、盛りだくさんの一日でした。

参加者からの感想をご紹介します。

佐藤芳郎さん
製造現場で研究しておられる方々の話をきくことができ、日本酒の理解をふかめて、日々たしなむことが可能になると思う。<中略>アメリカで月桂冠がつくった酒は、すきとおるおいしさをかんじました。

武谷要子さん
日本酒は日本人的カテゴリーではちょっと古く「昭和の香り」とか「和風」に語られがちですが、一方でというかビジネス故か、海外での酒造りが右肩上がりなのは面白いことです。日本酒の今昔も興味深く、アメリカ発の日本酒試飲も珍しく、充実して楽しい一日でした。


御香宮神社で三木宮司の説明を聞く。
壁画や門の保存、修復、継承についておうかがいしました


月桂冠大倉記念館で青木館長の解説を聞く


月桂冠大倉記念館で青木館長の解説を聞く

第63回体験セミナー巡礼(6) 四国遍路の成立をさぐる ─ ─阿波の霊場から

第63回体験セミナー巡礼(6) 四国遍路の成立をさぐる ─ ─阿波の霊場から

2011/11/12~2011/11/13

四国遍路といえば弘法大師ゆかりの霊場をめぐることを意味すると考えられがちですが、四国遍路は熊野信仰との関係、一宮信仰、山岳信仰、海の信仰などさまざまな要素が複雑にからまりあって今のような形で成立したということが指摘されています。

たとえば『今昔物語』や『梁塵秘抄』には聖といわれる民間宗教者が四国の海辺をまわりながら厳しい修行をする様子が描かれています。四国の外周部をまわるという現在につづく四国遍路の出発点には、こうしたプロの修行者の活動があったものと考えられます。

2日目の薬王寺や太龍寺など、厳しい修行のおこなわれた場所も訪ねます。 それぞれの霊場が弘法大師信仰と結びつけられてゆく過程や霊場がネットワーク化され、全体が弘法大師へと集約されてゆくまでについてもお話をうかがいます。四国遍路の起点である阿波の国で遍路の成立について考えます。

スケジュール
<1日目>霊場のネットワーク化
中世後期に阿波国一宮となった霊山寺(1番)、讃岐との交通の要所であった金泉寺(3番)拝観。 徳島県立博物館にて解説を聞きながら収蔵資料など閲覧。 本来の阿波国一宮の神宮寺、大日寺(13番)、常楽寺(14番)など拝観。

<2日目>海と山の修行の場としての霊場
鶴林寺(20番)、弘法大師が修行をした「阿国大滝嶽」と比定される太龍寺(21番)、海とのつながりや中世の熊野とも関わりのある薬王寺(23番)など拝観
※移動はすべて専用バスを使用。太龍寺ではロープウエィを使用。


第63回 四国遍路の成立をさぐる-─阿波の霊場から 実施報告

四国遍路の起点である徳島・阿波の霊場を訪ね、巡礼路が形成されてゆく過程についてさまざまな角度から考えました。じっさいにその地を目で確かめながら講師の話を聞いていると、川とかつての流通路の関係や山奥での聖の修行の場など、地理的、歴史的な要素がつみかさなって現在の遍路道に続いているのだということを実感しました。

参加者の感想を紹介します。

二神富子さん
私は四国の高知で生まれ育ったのでお大師(おだいっさん)はとても身近な存在でした。例えば村の井戸はおだいっさんの杖でチョンチョンと掘ったものだとか(中略)、ほんとうにそれを信じていておだいっさんはえらい人やなー、八十八ヶ所の寺もぜんぶ彼が作ったものだと単純に思いこんでいました。

今回の長谷川先生の話を聞いて、さまざまな聖たちの活動や辺地の生活、弘法大師信仰が複雑に結びついて今の形になったんだと少し解りかけてきました。 日本各地の巡礼の地を訪ねると必ず登場する修験道への関心もますます強まる一方です。


鶴林寺(第20番札所)にて


常楽寺(第14番札所)にて

第62回体験セミナー ネパール料理をあじわう ─ ”民族のるつぼ”ネパールの食文化にせまる

第62回体験セミナー
ネパール料理をあじわう ─ ”民族のるつぼ”ネパールの食文化にせまる

2011年7月9日(土)16時~19時半

ネパール料理と聞いてどのようなものを思いうかべますか? 約100ものカースト/民族によって構成される多民族国家ネパールでは、食文化も地域によってずいぶん異なっています。今回は家庭料理「ダールバート」と祭礼や祝事の料理「サマエバジー」を味わいます。(サマエバジーは特別メニューです。)ほかにもネパールから持ち帰ったグンドゥルック(乾燥させた発酵野菜)やロキシーという蒸留酒もご用意します。素焼き土器のおちょこ、パーラーはおみやげとして持ち帰りも可能です。料理を切り口にネパールの多様な文化にせまります。


第62回 ネパール料理をあじわう-”民族のるつぼ”ネパールの食文化にせまる 実施報告

ネパールが多民族によって構成されており、言葉から食事にいたるまでじつにさまざまであることや、水に対する意識と食事の準備、食べ方、台所の位置など食にまつわるお話をお聞きしました。

その後で先生がネパールから持ち帰ってくださったロキシー(蒸留酒)やグンドゥルックという乾燥させた発酵野菜を用いたスープ、ダールバートタルカリ(ふだんの食事)とサマエバジー(ネワール族のお祭りの食事)を味わいました。どのお料理もスパイスがきいていて味わい深く、とても好評でした。

お食事の途中ではバーンスリーという竹笛の生演奏のサプライズもあり、味覚だけでなく音楽も楽しみました。


上手に手でつまんで食べる方法も教えていただきました


バーンスリーの生演奏

第61回体験セミナー コタンを訪ねる ─ 白老・二風谷・静内

第61回体験セミナー コタンを訪ねる ─ 白老・二風谷・静内

2010年9月24日(金)~26日(日)2泊3日

白老、二風谷、静内など北海道南部のアイヌ文化に関わりの深い地域を訪ねます。北海道南部は、比較的大きなアイヌのコタン(集落)が存在したこともあり、アイヌの伝統文化継承の中心地です。

なかでも最終日に訪問する沙流郡平取町二風谷には、アイヌ民族に関わる遺跡、史跡、伝説などが多くのこされ、現在ではイオル(漁猟の場)の再生事業が進められています。そうした沙流川流域を散策し、萱野茂さんのコレクションを展示する資料館などを見学します。資料館は多くの文化財があるだけでなく、地域別のアイヌ衣装の展示や海外の民族資料と比較しながら見学できる点も見どころです。

また、蝦夷三官寺のひとつである有珠善光寺に伝わるアイヌ語訳を併記した念仏の版木(重要文化財)なども特別に見せていただき、アイヌと和人(日本語を話す人)の歴史について考えてみます。 9月末は鮭の遡上シーズンですが、アイヌの人びとにとっては新しい鮭(アシリチェップ)を迎える大切な季節です。二風谷では特別にポロチセ(伝統的家屋)の中で鮭や秋の食材を用いたアイヌの伝統的なお料理をいただきます。

1日目 9/24(金)
松前藩との歴史について学ぶ 支笏湖にて昼食後、蝦夷三官寺のひとつ有珠善光寺拝観、伊達市噴火湾文化研究所見学

2日目 9/25(土)
白老アイヌ民族博物館へ 白老陣屋、アイヌ民族博物館見学後、アイヌの伝統料理の昼食、シャクシャイン記念館(静内)見学

3日目 9/26(日)
萱野茂さんの暮らした二風谷へ 平取町立アイヌ文化博物館、萱野茂二風谷アイヌ資料館見学後、ポロチセ内でアイヌの伝統料理の昼食、平取ダムや沙流川流域の散策


第61回 コタンを訪ねる-白老・二風谷・静内 実施報告

初秋の道南でのセミナーはお天気にも恵まれ、鮭の遡上も見ることができました。講師の佐々木利和先生の「『研究』とかいうことではなく、できるだけ多くのアイヌの方々と話したりふれあってください」という言葉が印象的であったという参加者の多賀俊介さんの感想のとおり、訪問先ではさまざまな方からお話をうかがったり、伝統食をご用意いただくなど、大変貴重な体験ができました。

感想を紹介します。

わたしにとって今回の旅は、従来の断片的で中途半端な知識を一掃するところから始まった。佐々木先生の誘導でまずゆっくりと「物」の展示を見た後で話を聞くということを繰り返した事がまことに有効でありました。アイヌの人々が衣食を得た土地の感じを把み得た(もちろんわずかなものにすぎないだろうけれど、数百数千年の時の流れに比らぶれば・・)。でも、当地に拡がり生を営んだ数多の人々の、来し方行く末を相当に想起出来たように思います。佐々木先生によるアイヌ語読解がそれを促してくれました。幼時の、上下水道無し 停電あり 道に馬糞あり 薪割りあり・・・・・の自分の体験が、人々の生活感覚と”自然崇拝”に共鳴する助けにもなりました。
(N.S.さん)

松本勝博さんは句を寄せてくださいました。 夕空は七色八色鮭跳ねる 夕焼けの縄文の丘独り座す 北の大地の大自然の中で暮らしてきたアイヌの人びとの畏敬、調和、共生といった自然に対するかかわり方は、環境や資源の問題をはじめ、今日の世界が直面するさまざまな難問を解決してゆく上で教えられる点が少なくないことを実感しました。
(佐野滋さん)

アイヌ文化について学ぶというテーマでしたが、有珠噴火湾文化研究所では縄文時代貝塚の発掘現場(6000年前)や円空仏まで見せていただくなど数々のサプライズもありました。お世話になったみなさま、本当にありがとうございました。


白老のアイヌ民族博物館にて記念撮影


白老のアイヌ民族博物館にて解説を聞きながら見学


夕焼けの北黄金貝塚(発掘中の縄文遺跡も見せていただきました)


二風谷のチセ内でアイヌの伝統料理の昼食をいただく