第361回 シリーズ「人類学者×人類学者」(2) フィールドで人類学すること ─マリノフスキーの切りひらいた新地平

演題
シリーズ「人類学者×人類学者」(2)
フィールドで人類学すること ─マリノフスキーの切りひらいた新地平

内容
マリノフスキーが1922年に著した民族誌『西太平洋の遠洋航海者』は人類学にまったく新しい地平を切りひらいたとされます。そのどこが、どのように新しかったのか。またこの著作には何が書かれているのか。マリノフスキーの生涯をたどり、この民族誌の一部をみなさんと一緒に読みながら、「フィールドで人類学する」ことの意味を考えたいと思います。

※講演会終了後、講師の先生との懇談会をおこないます。

講師
三尾 稔(国立民族学博物館准教授)

日時
2008年7月5日(土) 14時~15時30分

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料

第360回 シリーズ「人類学者×人類学者」(1) レヴィ=ストロースとの出会い ─マルクス主義と構造主義のはざまで

演題
シリーズ「人類学者×人類学者」(1)
レヴィ=ストロースとの出会い ─マルクス主義と構造主義のはざまで

内容
レヴィ=ストロースの構造主義が日本で一世を風靡している頃、学生だった私は、その構造主義を敵視するかのような姿勢をとっていたマルクス主義人類学にはまっていました。ところが思わぬところで構造主義へとつながる考え方、トーテミズムに出会い、両者がトーテミズムに求めていたものは同じものではなかったかと、ふと気づきました。そんな私の文化人類学ことはじめをお話します。

※講演会終了後、講師の先生との懇談会をおこないます。感想や質問に答えていただくだけでなく、講師と参加者の情報交換の場にもなっています。もちろん聞いているだけでもかまいません。さまざまな話題が展開され、とても興味深いひとときです。ぜひ、一度ご参加ください。

講師
佐々木 史郎(国立民族学博物館教授)

日時
2008年6月7日(土) 14時~15時30分

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料

第83回 【座談会】 街角から見たウズベキスタンの過去と現在

演題
【座談会】 街角から見たウズベキスタンの過去と現在

内容
『広辞苑』では、嗜好品をつぎのように定義づけています。「栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るための飲食物。酒・茶・コーヒー・タバコの類」。はたして、嗜好品についてのこの定義は充分なものといえるのでしょうか。嗜好品の起源や歴史をみるかぎり、嗜好品のもつ社会的意味は『広辞苑』の定義以上におおきいとおもわれます。
嗜好品の人類史的意味について考えてみます。

講師
加藤九祚(国立民族学博物館名誉教授)、
大村次郷(写真家)
コーディネーター
西岡圭司(『季刊民族学』編集長)

日時
2008年6月22日(日) 14時~16時

場所
たばこと塩の博物館1F視聴覚ホール

定員
80名(申込先着順)

備考
■友の会会員:無料

第72回 民族学研修の旅 少数民族の村ですごす ─ ─雲南省 ナシ族・ペー族を訪ねて

第72回 民族学研修の旅 少数民族の村ですごす ─ ─雲南省 ナシ族・ペー族を訪ねて

2008年6月14日(土)~6月21日(土) 8日間

特別展「深奥的中国」の開催と関連した「民族学研修の旅」を開催します。

今回の旅では、中国西南部に暮らす少数民族のなかからナシ族とペー族の村を訪ね、彼らの暮らしに実際にふれていただきます。

訪問するナシ族の村では、人びとの手でトンパ文化を再生する取り組みが今おこなわれています。トンパと呼ばれる宗教職能者のなかでも数少ない高位の「大トンパ」が、実際に儀礼をおこないながら、トンパの知識を伝承していく「トンパ村」が今年開設されます。ここを一般公開前に特別にご案内いただき、彼らの取り組みについてリーダーの方から直接お話をうかがいます。ナシ族の人びとが暮らす村では紙漉の作業を見学するなどゆっくりと過ごしていただきます。

また、ペー族の村・周城では、同行講師の知人宅を訪問します。伝統的な家屋の内側にある中庭など通常の観光コースとはひと味違う、人びとの日常の暮らしを垣間見ることができます。村の廟でおこなわれるお祭りにも参加します。村での時間を過ごしながら、ペー族のくらしの感覚にふれてみましょう。

その他、世界文化遺産に登録された麗江の街並みやシャングリラのチベット寺院なども探訪。オリンピックなどを控え大きく変わりつつある中国において、少数民族の人びとの生活はどのような状況にあるのか。今の暮らしを知るなかで、観光開発と民族文化・伝統文化の保持・継承のあり方についても一考する旅です。


第72回 少数民族の村ですごす-─雲南省 ナシ族・ペー族を訪ねて 実施報告

特別展「深奥的中国-少数民族の暮らしと工芸」でとりあげられた中国少数民族を訪ねる民族学研修の旅を実施。25名の参加者が、雲南省の大理、麗江、シャングリラにてぺー族、ナシ族、チベット族の人びとの暮らしを垣間見ました。


大理ぺー族自治州博物館を講師の解説で見学


湖を船で渡り、ぺー族の定期市へ


市場には工芸品や食料品、日常雑貨、軽食などがならぶ


参加者の平岡美子さんから旅の感想をいただきました。

大理ペー族の村「周城の絞り藍染」を憂う  周城の村役場で書記の方から「周城の絞り藍染が村おこしにつながり、村の経済発展に貢献をし、1994年、2005年全国模範村として表彰されたが、現在は伸び悩んでいる」という話を聞きました。今わが国において、このような伝統工芸は和の見直し、スローライフの提唱のもとに人々の関心がたかまり、また海外の民芸がフェアトレードの名の下に保護されて、その発展に協力の姿勢ができつつあるのに、何故という思いをもちました。

その後、龍泉寺で行われている「単刀赴会」の宗教行事を見学。寺に着いたときお寺の境内に着飾った女性たちが行事のはじまるまで、談笑したり、木綿の布に絞りをしていました。彼女たちの頭飾りは、刺繍や絞り染めで、また絞りに刺繍と手の込んだものがみられました。(写真1)絞りが彼女たちの身を飾ったり、生活の一部であることに、朝、村役場で聞いた話が頭の中にひっかかりましたが、この後の藍染の工房見学に期待を持ちました。

午後、藍染の工房見学で、最初に目に付いたのは藍草である板蘭根(キツネノマゴ科。板藍根とも言う、和名では琉球藍)。庭にあり、その葉を浮かべたお茶でわれわれを歓待してくれました。順に、下絵を布にうつす男性が作業する絵刷り(写真2)、絞り(年配の女性)、木の樽での男性が染めていました。(写真3)干し場と見学の場所の移動もなしに目をずっと動かすだけの距離でした。絞りをしている女性たちの手の動きは早く、雨の中暗い(写真4)半室内でも手の動きは留まることなくこの絞りに携わっている年月を感じました。しかし…染め液も水っぽく、板藍根では泥藍をつくり発酵している状態で染めるのがあたりまえで、こんなしゃぶしゃぶの液ではありません。…これは本物の藍染ではなく合成藍だと思いました。

伝統工芸を生かし、マーケットに答えていくには、手絞り・手染めという手仕事では駄目で、その過程に伝統的な技術・デザインを生かすことにあります。周城の絞り藍染は染める作業に大量生産をめざすために天然藍から合成藍に変わり、また前日、喜州の「巌家」の庭にほしてあった赤・緑・茶・藍の大きな染布(写真5)も同じことだと思います。一度化学染料の簡易さ・使い易さに慣れてしまうと、もう一度伝統的な染め方に戻るのは難しいと思われますが、いいものを創る気持ちを持てば必ずできると思います。

周城の絞り藍染の90%が日本に輸出されているといいます。この絞り染めが日本のどこに売られているのか、この絞り染めにかかわっている人たちは知っているのでしょうか。(中略)村の女性たちの髪飾りの素朴であたたかみのあるデザイン、観光ガイドのベストなど生活の中にあってその美しさがあります。デザインも生活の中から生まれてくるパターンがいい。染め上がりの美しさを大事にしてほしい。周城・大理を訪れる観光客に価格ダウンをして、売り込む姿はこの絞りをしている女性たちにとってよいことではなく、このままいくと後継者つくりが難しくなると思いました。早く軌道修正がおこなわれることを願います。


写真1 周城「単刀赴会」の女性の頭かざり


写真2 藍染 絵刷り


写真3 藍染 染め


写真4 絞り作業


写真5 喜州の「巌家」で見た染布

撮影:平岡 清さん

第359回 政体変革期のネパール ―王制から共和制へ

演題
政体変革期のネパール ―王制から共和制へ

内容
2008年4月10日、昨年2度にわたり延期された憲法制定議会選挙がいよいよ実施されます。はたしてネパール国民は、王制の廃止と共和制への移行を選択するのでしょうか。最近までネパール共産党(マオイスト)の内乱で揺れ動いてきた、ネパールの現状について考えてみましょう。 ※南先生はこの選挙期間にネパール入りされ、現地調査をする予定です。その最新の情報についてもご報告いただきます。

講師
南 真木人(国立民族学博物館准教授)

日時
2008年5月3日(土) 14時~15時30分

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料