版画展「田主誠 Museum of Dreams ─ みんぱくと歩んだ版画家の創作世界」開催

今春、亡くなった版画家・田主誠(1942 -2023)の版画展を国立民族学博物館エントランスホールで開催します。
田主誠は、国立民族学博物館(みんぱく)の開館当初から広報誌『月刊みんぱく』や研究連絡誌『民博通信』の挿画をはじめ、みんぱくの研究者とコラボレーションする形で新聞や雑誌の仕事を数多く手掛けました。一方で、仮面や民具などみんぱくの収蔵品をモチーフにした作品や国内外の旅での心象風景、さらに文学や音楽、故郷・舞鶴に着想を得たものなど、独自の創作活動も抽象から具象まで膨大かつ多岐にわたります。そこには、みんぱくで出会った異文化への驚きや憧れ、旅先や日々の暮らしの中で触れあった人びとへの優しく温かいまなざし、ユーモアにあふれた人柄が感じられます。来年みんぱくが創設50周年を迎えるにあたり、その最初期からみんぱくとともに歩み、みんぱくをこよなく愛し、みんぱくから広がった体験や交流を心と表現の糧とした版画家の創作世界の一端をお楽しみください。

『有明海のウナギは語る─食と生態系の未来』刊行

『有明海のウナギは語る─食と生態系の未来』(2023年3月1日発行)が完成いたしました。

■B5判
■288頁
■定価:2,970 円(税込)
■ISBN:978-4-309-92253-9
■著者:中尾勘悟 肥前環境民俗(干潟文化)写真研究所
■編著者:久保正敏 国立民族学博物館名誉教授
■発行:公益財団法人 千里文化財団
■発売:河出書房新社

当財団のオンラインショップまたは、
河出書房新社のウェブサイトにてお求めいただけます。

理事長徒然草(第18話)
前理事長小山修三先生を追悼する

前理事長小山修三先生が2022年10月26日に天寿を全うされました。満83歳でした。謹んで哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げます。

小山修三先生は2013年4月1日に理事長に就任され、2018年3月末まで5年間在任されました。ちょうど財団法人制度が見直され、当財団も非営利型の一般財団法人として再スタートを切った時期に当っていました。その意味で従来とはちがう運営に心を砕かれ、慣れない舵取りに腐心されたのではないかと想像しております。

たとえば『季刊民族学』に新風を吹き込もうと「信州の山」の特集を組み、長野県知事と元文化庁長官との鼎談を企画されました(157号、2016年)。また特集「千里から考える ニュータウンとそのゆくえ」も吹田市立博物館館長をつとめた時期の人脈が功を奏しているように思われます(161号、2017年)。わたしはたまたま信州の出身であり、吹田市立博物館の後継者でもあったことから、両方の号に協力し、みずからも寄稿することになりました。

小山先生は1976年に国立民族学博物館の助教授として着任され、縄文文化やアボリジニ文化の研究を推進する一方、コンピュータを用いた人口解析など、人文科学と情報科学のコラボにも熱心でした。各種シンポジウムや展示にも積極的に関与され、研究部長としての重責も果たされました。民博退職後、2004年からは吹田市立博物館の館長として「開かれた博物館」をモットーに果敢に市民参画を率先垂範されました。民博の広瀬浩二郎氏と取り組んだ「ユニバーサル・ミュージアム」をめぐる一連の研究・企画も画期的な業績の一つです。

小山先生は他の追随を許さないほどの馬力の持ち主でしたが、寄る年波を感じられたのか、4年前に理事長職を退かれました。不肖わたしがその跡を継ぎ微力を尽くすことになりましたが、偉大な先達を失ったことは誠に残念でなりません。どうぞ安らかにお眠りください。

なお、以下の追悼文もご参照いただければさいわいです。
吹田市立博物館のホームページ
吹田市立博物館の市民ブログ
吹田市立博物館 館長のページ