93号 2000年 夏

機関誌
タヒチの女性の微笑み
飯田裕子

フアヒネ島に半生をかける

篠遠喜彦

南太平洋のフランス領ポリネシア、ソサエティ諸島内位置するフアヒネ島。近代開発に揺れていた1960年代、そこに眠る数おおくの宗教遺跡マラエんお復原を依頼された考古学者・篠遠喜彦博士は、その後、現在までつづく精力的な復原作業をとおして、島民たちにも忘れられていた歴史を掘り起こし、この地域の貴重な文化遺産と自然環境の保護につとめてきた。いまやこの島のシンボルとなった復原遺跡のかずかずは、島民たちの誇りにもなっている

企業ミュージアム探訪 第1回

「uccコーヒー博物館」
香りは世界を駆けめぐる

古代日本とペルシア

二千年紀の初旅、イラン
樋口隆康

栄華を誇ったペルシア帝国の美術品や遺跡を数おおく残すイランは、典型的なシルクロードの国である。中央アジアのオアシス都市を結んで走る東西の交通路シルクロードを伝って、華やかなりし時代のペルシア文明は遙か日本の地にもゆたかな香りをもたらした

森に火をつけよ

オーストラリア・アボリジニの炎のコントロール
小山修三

オーストラリアの先住民アボリジニっは、いまでもさかんに火を放っている。かれらは火をつかいこなすことによって環境をコントロールし資源を確保してきた

平原に聴く、シャーマニズムの息吹

島村一平

モンゴル国東部の平原に暮らすブリヤート族は、20世紀初頭に旧ソ連領から南へ移住してきた人びとの子孫である。時代のうねりを生き抜いてきたかれらのシャーマニズムには、多様な要素をのみこみ、はきだす活力がある。平原にひろがる精神世界のいまをたずねた最新レポート

リス族の刀杆節

中国雲南省、チベット・ビルマ語族の刀はしご登りの祭り
鎌澤久也

建築人類学者のまなざし2

死を排除した住環境
佐藤浩司

92号 2000年 春

機関誌
エチオピアのキリスト教会
野町和嘉

韓国を知る Q&A 115

文・朝倉敏夫
写真・大村次郷
加藤 敬
名智健二
芳賀日出男
藤森 武

華やかな色彩のチマ・チョゴリ、各過程で大量に漬けられるキムチ、床下に暖房装置オンドルがある住まいなど、育まれてきた独自の伝統文化はもとより、人口の都市集中や教育といった現在の社会問題、今後の日韓交流についてなどを115の質問にまとめました。民族学・文化人類学の視点から韓国の社会と文化を知り、相互理解を深めようとする質疑応答とヴィジュアルな写真をとおして、ゆたかな韓国像をこうちくされることをねがっています

いま、博物館がおもしろい

文・千地万造
写真・藤森 武

多種多様な博物館が日本には4500以上ある。気軽に足を運び、日常的に楽しんでいただきたい

スカート刺繍に縫いこむ思い

安井清子

モン族の伝統的なスカートは、麻の刈り取りにはじまり、糸を紡ぎ、藍染めをほどこした手作りの布でつくられる。畑仕事や家事、子育てのあいまを縫って、女たちは今日も一年がかりのスカートづくりにはげむ

エチオピアの岩窟聖堂

文・山形孝夫
写真・野町和嘉

人口のおよそ半分をキリスト教徒が占めるエチオピア。そこに生きつづけるキリスト教は、ヨーロッパ経由のキリスト教とはまったくことなる、独自の系譜をたどってきた。数多くの巡礼者を集める聖地ラリベラをはじめ、高地に点在する岩窟聖堂は、いまも祈りの場として人々の生活に深く根をおろしている

天界にむけて開かれた不思議空間
ラリベラを中心とした岩窟聖堂群を、宗教的超越の装置として捉え、エチオピアにおけるキリスト教受容の謎をひもとく

建築人類学者のまなざし

空間の変容と人間
佐藤浩司

91号 2000年 新春

機関誌
カザフ人の長老
大塚知則

モンゴル国のカザフ人

チョナイ・クランダ/小長谷有紀/イチンホローギーン・ルハグヴァスレン/田中克彦/大塚知則

ガリフナ イン ニューヨーク

冨田 晃

いざなぎ流の世界

写真=芳賀日出男

神がみと生きる
梅野光興

いざなぎ流と日本各地の祭祀と「湯」
芳賀日出男

いざなぎ流にみるアジアの神がみ
中城正堯

ベンガルのモノモホン・ドット廟
ヒンドゥー教徒とイスラーム教徒がつどう聖者廟

外川昌彦

民族学者のまなざし 最終回

「現在」の人類学
大塚和夫

90号 1999年 秋

機関誌
スルマの女性
新田 樹

スルマ

新田 樹
福井勝義

エチオピア西南部からスーダン南部にかけての地域は民族間関係が複雑かつ流動的で、その体型の把握はほかに類をみないほど困難である。襲撃を繰りかえすかれらの日常の背景にあるアイデンティティ徒は何か。牧畜や農耕を生業とするかれらの日常を、スルマ系民族であるバーレやチャ・イを中心に、新田氏の新鮮な映像でおとどけする。ボディ社会をはじめ、オモ川・ナイル川ちいきにおけるいくつもの民族を対象に、長年のフィールドワークの経験をもつ福井氏には、この地にいける民族間かんけいをと戦いの論理に、エスノシステムの観点からせまっていただいた

サハの馬乳酒まつり

小長谷有紀

かつてアジアの草原を縦軸にかけめぐったテュルク系騎馬遊牧民の文化は、いまも国境の枠を越えて生きつづけ。ユーラシアの歴史を物語っている。極寒のシベリアに適応したウマの放牧をおこなうサハ共和国の馬乳酒まつりをたずね、テュルクの故地をされるモンゴル高原に伝わる儀礼とのつながりを読む

シッキムの発酵食品

吉田集而
小崎道雄

ネパールとブータンの狭間にあり、インドと東方アジアの文化が交差するシッキムでは、どのような発酵食品がつくられているのだろうか

イニュピアック・エスキモーのクジラ猟

八木 清

ネパールとブータンの狭間にあり、インドと東方アジアの文化が交差するシッキムでは、どのような発酵食品がつくられているのだろうか

孔雀は舞い、竹は奏でる

中国雲南省南部シップソーンパンナーの音楽と舞踊
秋篠宮紀子

一九九八年の八月上旬からの役二週間、中国雲南省の昆明と西双版納泰(タイ)族自治州を訪問した。そこでは、西双版納(タイ語表音でシップソンナーパンナー)に住むタイ族、ハニ族、そしてチノー族の音楽や舞踊を見聞する機会を得た

民族学者のまなざし9

スワヒリ・コーストとネットワーク
大塚和夫

89号 1999年 夏

機関誌
ラジャスタンの女
管 洋志

客船「飛鳥」 舞台裏の国際社会

芳賀日出男

98日間世界一周の旅をつづけるうち、この日本の客船「飛鳥」が多国籍の船員たちによって運航される「混乗船」であることを知った。ボーダーレス時代の国民性を世界一周客船にみる

アラム語を話す村マールーラ

川又一英

イエス・キリストはユダヤ人でありながらアラム語を母語としていた。キリスト教がオリエント世界から地中海世界にひろがるにはギリシャ語がアラム語に取って代わった。アラム語は地上からほとんど消え、今日では、この聖なる言葉は、シリアのマールーラと周辺の村で生き残っているだけである

神と人との交流の宴ルロ

長野禎子

いっせいに焼き払われる供物、人体の肉と血を神に捧げる針刺し。青海省チベット族を中心につたわるルロの祭りに、供物の「破壊」と、身体をとおしての神とのコミュニケートという、チベットの宗教の基層をみることができる

長野県新野の盆踊り

文・小川博司
写真・岡本 央

夜を徹し、唄声とかけ声が山間の地に響きわたる。楽器もレコードもいっさい使わず、10時間近くもつづくこの盆踊りの、独特のノリと快楽

川蔵公路を行く

鎌澤久也

おとずれる地域ごとにちがった表情をみせるチベット。四川省の成都からチベット自治区のラサをつなぐ、2500キロの道のりを辿った

バルト海の要衝オーランド

小谷 明

フィンランドとスウェーデンに挟まれたバルト海北部、ボスニア湾の入り口に点在するオーランド諸島。のどかな風景のなか、廃墟と化した要塞からは、歴史をものがたるように砲台が海を向いている

海を渡った「大モンゴル展」

写真・大塚知則
文・張 慶浩/松原正毅/李 仁淑/小長谷有紀ほか

民博で1998年に開催された特別展「大モンゴル展」がこの六月から韓国のソウル郊外の京畿道博物館でも開催されている。日本、韓国、モンゴルの3国の協力のもとに立案された企画が実現するまでの経緯をそれぞれの立場でふりかえり、その意義を考える

民族学者のまなざし8

「制度」としての人類学者
大塚和夫