129号 2009年 夏

機関誌
竹をつかったお椀型の船に乗る少年たち
中 淳志

特集 竹と暮らし
モンスーンアジアの竹文化

写真・中 淳志
溝縁 ひろし

観光地にひろがる美しい竹林の風景。懐石料理に季節感を添える筍料理。人びとは「竹」に非日常性をもとめているように感じられる。 しかし、食事にかかせない「箸」、記録に不可欠な「筆」など、日常生活に竹カンムリの漢字が数えきれないほど存在するように、かつては不可欠な存在だったのではなかろうか。 現在でも、さまざまなかたちで竹と密接な関わりをもつモンスーンアジアを事例に、暮らしに近づいたり離れたりと、時と場所で変化する人と竹との関わりについて考える。

竹を語ろう
久保 正敏

タケとは何か――モンスーンアジアに広がるタケ
柏木 治次

簡便素材としての竹
小島 摩文

儀礼の竹
吉田 裕彦

竹の楽器
福岡 正太

建築素材としての竹
清水 郁郎

竹と人の関わり――竹筬から見えてきたもの
田口 理恵

シリーズ 万国喫茶往来
第5回 茶房(韓国)

文・朝倉 敏夫
写真・大村 次郷

ミルクを食べる
アジア大陸の人びとと乳製品のかかわり

平田 昌弘

炎天下50度を超えるなか、脱水しきって辿り着いたベドウィン(アラブ系牧畜民)の黒いテント。ベドウィンはあたたかく迎え入れてくれ、一杯の酸っぱいミルクを差し出してくれた。適度な酸味のキレと透き通った味が、身体の細胞の隅々まで染み渡っていく。美味しさの感動が身体を振るわせる。 後で、その時の酸っぱいミルクは、酸乳を攪拌してバターを加工した際にでる残乳(バターミルク)であることを知る。その時の感動を胸に、ミルクを知れば知る程に、ミルクの奥深さにのめり込んでいった。 アジア大陸の人びととミルクのかかわりを2地域を比較しながら眺めてみたい。

連載 朝メシ前の人類学
フィールドでうまれる対話 第8回(最終回)
私たちは、これからどうしたらいいんですか?
文・松田 凡
写真・水井 久貴
絵・中川 洋典

アラブとイスラエルの周縁で
ガリラヤ地方のメルキト派カトリック信徒

菅瀬 晶子

イエス・キリストの故郷とされるガリラヤ地方。現在では、レバノンと国境を接するイスラエル領内にあり、メルキト派カトリックを信仰するアラブ人キリスト教徒が多く居住している。 イスラエルの中のアラブ人、そして、アラブ人のなかのキリスト教徒という二重のマイノリティである彼らは、どのような生活を送っているのだろうか。 ガリラヤ地方に住むメルキト派カトリック信徒の信仰生活を中心に紹介し、イスラエルのなかでアラブ人キリスト教徒として生きることを考える。

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

【地域(国)】
東アジア(日本、韓国)
東南アジア(インドネシア、ラオス、タイ)
西アジア(シリア、イスラエル)
北アジア(モンゴル)
東アフリカ(エチオピア)

128号 2009年 春

機関誌
「かわらけ」でミルクティーを飲むサラリーマンたち
文/写真・大村次郷

市がたつ雲海の谷
多民族が暮らす雲南省の国境地帯をゆく

西谷 大

中国雲南省の最南端に、人口およそ1000人の者米という町がある。町の南に聳える山を越えればベトナムという国境地帯だ。2003年の3月上旬に棚田と焼畑の生業調査のため、フィールドを探しに、はじめてこの町を訪れた。後でわかるのだがこの地域では6日に一度、町や村で定期市がたつ。そういった予備知識もなく、たまたま市の前日に者米に到着した。

シリーズ 万国喫茶往来
第4回 お茶好きにされた人びと(インド)

文・辛島 昇
写真・大村 次郷

ラコタ・スー族
伝統再生への道程

阿部 珠理

かつて、アメリカ大平原で移動生活を営んでいたラコタ・スー族。一九世紀末より続く保留地での生活の苦難を乗り越えて、民族の再生への道を歩みつつある。彼らはどのようにアメリカ合衆国の「今」を生きているのだろうか。

朝食に暮らしあり15
成長する少女たちの朝
太田 心平

朝メシ前の人類学
フィールドでうまれる対話 第7回
あれってホンモノの銃、ですよね?
文・松田 凡
写真・水井 久貴
絵・中川 洋典

再見細見世界情勢13
民族、階級、ガヴァナンス
フィジーの政治的不安定と2006年クーデタ
丹羽 典生

カメルーンの「商売の民」バミレケ
頼母子講がつむぐ社会

平野 美佐

アフリカ大陸のくびれたところにあるカメルーン共和国は、二〇〇二年サッカーのワールドカップ開催時、大分県中津江村にキャンプを張ったことで、日本でもその名をひろく知られるようになった。しかしそれ以降マスメディアでの情報は途絶え、サッカーが盛んで時間にルーズ、陽気な国民といったイメージからあまり進んでいない。ここでは、筆者が延べ三年暮らしたカメルーンの首都ヤウンデで生きる人びとの暮らしを紹介したい。とくに、カメルーンにおいて商業民として知られる「バミレケ」というエスニック・グループと、彼らが活発におこなう頼母子講について紹介したい。

【地域(国)】
東アジア(中国、韓国)
南アジア(インド)
オセアニア(フィジー)
東アフリカ(エチオピア)
西アフリカ(カメルーン)
北アメリカ(アメリカ)

127号 2009年 新春

機関誌
那智を出て、大雲取越の難路を行く修験者
文/写真・中 淳志

大峯山の修験道
自然とともに生きる信仰の実践

文・鈴木 正崇
写真・中 淳志

国土の七五パーセントを山や丘がしめる日本。 古来山岳は、厳しさとともに親しみを与える存在であり、それらはいつしか、生業の差異をこえた多くの人びとにとって、崇拝の対象となってきた。神道の成立、仏教の流入、そしてそれらの融合と、時代とともに変遷する山岳信仰。

大峯山の峰入りを中心に、日本の基層文化について考える。

トルコのアレヴィー
神への愛を実践する人びと

米山 知子

スポットライトに照らされた舞台。その上では、派手な衣装を着た男女が、トルコ特有の撥弦楽器バーラマの旋律に合わせ、神妙な面持ちで旋回している。 その姿はまるで何者かに取り憑かれたかのようで、観るものを異なる世界へと誘う。 トルコには、アレヴィーと呼ばれる人々がいる。 彼らは、かつて儀礼の中で行われていたセマーと呼ばれる宗教「舞踊」を、自分たちの存在をアピールするために、現在では様々な場で実践している。

長い歴史の間、苦難を乗り越えてきた彼らの、セマーを介して繰り広げられる大都市イスタンブルでの生活をひも解いていく。

シリーズ 万国喫茶往来
第3回 チャーイ 絆のシンボル(イラン)
文・清水 直美
写真・大村 次郷

朝メシ前の人類学
フィールドでうまれる対話 第6回
どうして神を信じないの?って聞かれて……
文・松田 凡
写真・水井 久貴
絵・中川 洋典

再見細見世界情勢12
北アイルランド紛争
和平プロセスが目指すもの
文・森 ありさ

海人万華鏡第14回
海と陸の交差線
living on the crossroads of ocean and land
文・あん・まくどなるど
写真・礒貝 浩

朝食に暮らしあり14
アンデス高地の朝食
八木 百合子

清明節
中国の墓参り

川口 幸大

冬至から105日目、二十四節季のひとつ清明節に、中国の人びとは墓参りにむかう。 おおよそ新暦の4月5日。春の陽気のなか、家族と近しい親族が一同に集まり、おそなえものの食品をかかえて墓のある丘に登るようすは、さながらピクニックといったふうでもある。 変貌いちじるしい中国社会にあって、人びとはどんなふうに墓に参り、祖先を祭祀しているのだろうか。

広州市の郊外に位置するある村の墓参りに注目した。

書架はいざなう
武道の国際化に思う
オリンピックと奉納演武の違いは?
広瀬 浩二郎

本棚 特別編
たゆまぬ梅棹山脈 『梅棹忠夫に挑む』の刊行にちなんで
飯田 卓

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

【地域】
東アジア(日本、中国)
西アジア(イラン、トルコ)
東アフリカ(エチオピア)
西ヨーロッパ(アイルランド)
南アメリカ(ペルー)

126号 2008年 秋

機関誌
ミャンマーで得度式を迎える少年たち
兵頭 千夏

メキシコの夢
マヌエル・ヒメネスとゆかいな木彫りたち

冨田 晃

アメリカ合衆国において、出自に関係なく成功していくことを「アメリカン・ドリーム」といい、アメリカに移住してきた人びとが困難を乗り越えて成功にいたる物語が多くの小説や映画で描かれてきた。そのなかでは、「移民」というよそ者の立場を抜けだし「アメリカ人」として、のちの生涯をおくることが「幸せの形」と語られてきた。

ただし、この成功譚には、「アメリカのみが豊かな国であり、そこに暮らすことこそが人間の幸せなのだ」という固定観念が隠されている。 人間の幸せとは何か。

アメリカで成功を得ながらも、生まれ育ったメキシコの小さな村にもどり、もうひとつの夢「メキシカン・ドリーム」をはたした一人の男の人生を通じて、人間の幸せと現実の世界構造について考えてみたい。

ブルガリアの「色彩豊かな」村
ポマク女性の装いと暮らし

松前 もゆる

ブルガリアには、「ポマク」と呼ばれるムスリムの人びとがいる。彼らは、自分たちの村のことをしばしば「色彩豊かな」「色鮮やかな」と表現する。 それは、村での伝統的な衣服であるシャルヴァリやスカーフの華やかな色柄に由来している。 これらの女性の装いは、近代以降の国家政策のなかでナショナリズムやイデオロギーと複雑にかかわりあい、規制をうけてきた。

1989年の社会主義体制の崩壊を契機に、シャルヴァリやスカーフは復活したが、着用することによって身内の男性たちの後進性を表すなど、さまざまな意味合いをもつ。 一方、結婚の際には欠かせない贈答品とされ、女性たちの関心事としての側面も依然としてもちあわせている。 ポマク女性の装いから、伝統のあり方、服装をめぐる社会性とアイデンティティを考える。

朝食に暮らしあり13
タマレスとチョコラテ
鈴木 紀

シリーズ 万国喫茶往来
第2回 消えたサモワール(ロシア)
文・沼野 恭子
写真・大村 次郷

チロルの祭り
オーストリア、アクサムス村のヴァンペラーライテン

小谷 明

再見細見世界情勢11
メキシコの先住民運動
サパティスタ14年の歩み
柴田 修子

海人万華鏡第13回
海を潜るその日、その日
living day by day beneath the ocean`s surface
文・あん・まくどなるど
写真・礒貝 浩

ミャンマー
民族衣装の華やぎ

兵頭千夏

多民族国家のミャンマーには100以上もの少数民族が存在する。 ビーズやコインを縫いつけた刺繍が見事なアカ族、派手なターバンが目をひくパオ族、黒衣に銀細工が映えるカチン族、細い真鍮を首に巻きつけたパダウン族、顔に刺青を施したミンダ・チン族など。

衣装だけでなく、装飾品、化粧、髪型や髪飾りも含むその装いからは、独自の美的センスが感じられる。 華やかで多彩な衣装を人びとの暮らしとともに紹介する。

本で会いましょう25
『他者の帝国』
新大陸発見から現代にいたるインカの実像を多角的に分析
関 雄二さん(インタビュー)

書架はいざなう
学者マンガ家が薦める文化人類学的マンガ
都留 泰作

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

【地域(国)】
東アジア(日本)
東南アジア(ミャンマー)
東ヨーロッパ(ブルガリア、オーストリア)
ロシア
南アメリカ(メキシコ)

125号 2008年 夏

機関誌
マンチェスターの戦争記念博物館のカフェテリアで
大村 次郷

新シリーズ 万国喫茶往来
第1回 紅茶とコーヒー
「紅茶の国」イギリス

文・川北 稔
写真・大村 次郷

1杯の飲みものにより、人は心身を癒し、そして人と人のあいだに会話をうみだす。世界各地の人びとは、どんなものを、どんなときに、誰と飲むのだろうか。

人とモノの流れが拡大し、さまざまな社会変化が急速に進む現在、それぞれの地域の喫茶習慣はどのような影響を受けているのか。

変わったもの、変わっていないもの、最新の喫茶事情を紹介するとともに、1杯の飲みものがうみだす空間を通して社会を考察する。 第1回は、紅茶文化が、少子・高齢化やライフスタイルの変化によって急速に変わりつつあるイギリスを紹介する。

タヒチのタタウ
文化復興とグローバル化をめぐって

桑原 牧子

タヒチ語で「タトゥー(刺青)」を意味するタタウの習慣は、1830年代にキリスト教宣教師によって禁止された。しかし1970年代、欧米での流行とともに復活し、80年代の太平洋諸国の独立にともなう民族アイデンティティの再構築と文化復興運動により、タヒチの伝統文化として再認識されている。

朝食に暮らしあり12
1460回の朝食
セネガルの暮らし
三島 禎子

サウディ・アラビアのラクダ・レース
現代に浮かびあがる、アラブ社会のネットワーク

縄田 浩志

サウディ・アラビアで年に一回おこなわれる文化祭典「ジナドリーヤ」。そこでは、大規模なラクダ・レースが開催される。ラクダ・レースにかかわる人とラクダの背景を見ていくと、アラビア半島とアフリカ大陸の、紅海をはさんだアラブ社会の交易ネットワークが浮かびあがってくる。

朝メシ前の人類学
フィールドでうまれる対話 第5回
子どもたちの眼って、どうしてあんなにキレイなんでしょう?
文・松田 凡
写真・水井 久貴
絵・中川 洋典

海人万華鏡第12回
海の彼方をめざして 星と風に導かれる海人
living beneath the stars navigating the oceans
文・あん・まくどなるど
写真・礒貝 浩

世代文化を考える
韓国の三八六世代とは何か

太田 心平

1980年代、韓国の民主化運動において牽引役として活躍した世代は、今も政治をはじめ社会に影響を与え続けている。この世代を「三八六世代」と呼び、独特の世代感情をもつ人びととして異化している。韓国において「世代」がどのような意味をもつのだろうか。

本で会いましょう24
『女乗物』
保存科学の手法で探る華麗な装飾の実態
日高 真吾さん(インタビュー)

書架はいざなう
読んで旅するインドの時空
三尾 稔

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

【地域】
東アジア(日本、韓国)
西アジア(サウジアラビア)
南アジア(ネパール)
オセアニア(フランス領タヒチ)
東アフリカ(エチオピア、スーダン)
西アフリカ(セネガル)
西ヨーロッパ(イギリス)