121号 2007年 夏

機関誌
山の神アプに発掘前の祈りを捧げる人びと
義井 豊

文化遺産との共生
ペルー・アンデス

写真・義井 豊

古代アンデス文明の遺跡の宝庫、ペルー。世界文化遺産への人気で近年いっそう注目を集める地だが、資金的基盤をもたない国には、保護・保全をめぐって観光や開発との両立など、さまざまな問題がある。地元住民は文化遺産とともに生きるためにどのような試みをおこなっているのか、調査をおこなう研究者はどのようにして力になっていけばよいのか。今年で五十周年を迎える日本の考古学調査団のあゆみをふりかえりつつ、文化遺産との共生のあり方を考える。

序章 文化遺産は誰のものか 発掘からの教訓
関 雄二

第1章 アンデス文明の源流をもとめて
井口 欣也

第2章 盗掘者の論理と発掘者の論理
関 雄二

第3章 クントゥル・ワシ遺跡と地元住民
加藤 泰建

日本の考古学調査50年のあゆみ
文・坂井 正人

第4章 文化遺産の開発と住民参加
関 雄二

朝食に暮らしあり8
モーターサイが運ぶ朝食とうわさ
高城 玲

大文字五山の送り火の都市人類学

文/写真・和崎 春日
写真・溝縁 ひろし

8月16日、京都の夜を照らす大文字五山送り火。その時空間には、さまざまな思惑をもった人びとが集まる。行事を執行する人に加え、盆行事として祈る人や、見物に来る人、それにあやかり商売やイベントをおこなう人。「民俗」と「風俗」がからみつき、それぞれの人にとっての「大文字五山送り火」となる。人を生かし、人に生かされる都市祭礼の様相をみる。

朝メシ前の人類学
フィールドでうまれる対話 第2回
あの肌の色がちがうオヤコ、見ました?
文・松田 凡
写真・水井 久貴
絵・中川 洋典

海人万華鏡第8回
定地網漁業とクラゲと気候変動のことなど 島根半島恵曇漁港の場合
with climate change
文・あん・まくどなるど
写真・礒貝 浩

再見細見世界情勢7
カンボジア内戦
歴史の検証と未来への展望
文・天川 直子

大インダス世界への旅
第1回 源流
チベットからラダックへ

船尾 修 西チベットにそびえる聖山カン・リンポチェ北側を源流とし、チベット、インド、パキスタンを通りアラビア海に達する大河インダス。流域の風土や民族には独自性と同時に「インダス世界」としての連続性が存在する。源流から河口へ向けての旅を縦軸に、そこに歴史という時間の流れを横軸として加味することにより、「インダス世界」の全体像が立体的に浮かびあがってくる。

書架はいざなう
文化人類学者を魅了する上質ミステリー
春日 直樹

本で会いましょう21
『南米キリスト教美術とコロニアリズム』
植民地政策と教会美術を通じて南米の高地と低地に共通性を見出す
齋藤 晃さん(インタビュー)

本棚
『河口慧海日記――ヒマラヤ・チベットの旅』
『さらばモンゴロイド――「人種」に物言いをつける』

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

【地域(国)】
東アジア(日本、中国)
東南アジア(タイ、カンボジア)
南アジア(インド)
東アフリカ(エチオピア)
南アメリカ(ペルー)

第70回 民族学研修の旅 友の会発足30周年記念特別企画 サンチャゴ巡礼の道  13泊14日

第70回 民族学研修の旅 友の会発足30周年記念特別企画 サンチャゴ巡礼の道 ─

2007年6月13日(水)~6月26日(火) 13泊14日

11世紀には整備され、年間50万もの人が様々な願いや祈りを胸に歩いたといわれるサンチャゴ巡礼路。1993年に世界遺産に登録されたこともあり、あらためて注目を集めています。

サンチャゴ巡礼路にはいくつかのルートがありますが、今回はその中でも最も美しく魅力的なフランスルートをたどってサンチャゴ・デ・コンポステラの大聖堂をめざします。イバニェタ峠をとおってピレネーを越え、旅の最後には巡礼者が生まれ変わるといわれるフィニステル岬まで足をのばす壮大な旅となります。1,600㎞にも及ぶ行程を旅し、巡礼の道の一部を実際に歩く体験をとおして普段はなかなか気づくことのない自分に向き合えるのではないでしょうか。

途中、サンチャゴ巡礼を何度も自身の足で歩き続けているフランス人巡礼者も同行します。巡礼にかける思いや旅で出会ったことなどいろいろなお話を聞くことができると思います。


第70回 サンチャゴ巡礼の道- 実施報告

 「友の会」発足30周年を記念して、第70回民族学研修の旅「サンチャゴ巡礼の道」が15名の方々の参加を得て、2007年6月に実施されました。世界遺産にも登録されているサンチャゴ巡礼路、その中でフランス中南部の都市ル・ピュイからピレネー山脈を越え、スペインの聖地サンチャゴ・デ・コンポステーラ、さらに地の果てフィニステル岬まで約1600キロメートルをいく壮大な旅でした。


参加者の野中貞宏さん・迪子さんから旅の感想をいただきました。

「サンチャゴ巡礼の道」に参加して

今回研修の旅に参加して、興味のあったこと、印象に残ったことをいくつか書いてみたい。 昨今、聖地巡礼は多くの人びとの関心を集め、熊野古道、四国遍路などが賑わっている。

サンチャゴ巡礼も聖年には1000万以上の人が参加するようだが、すでに中世の時代に50万人を超える巡礼者がいたという。当時の人びとが道すがら見たであろう風景がロマネスク建築や彫刻である。これらが今回巡った「ル・ピュイの道」にたくさん残されていることに大いに関心をもった。出発地ル・ピュイのノートルダム大聖堂、サン・ミシェル礼拝堂やコンクのサン・フォア教会堂入口の「最後の審判」図が印象深い。モアサックのサン・ピエール修道院では、中庭の回廊にある列柱の彫刻と建物がもつ雰囲気に圧倒された。そのほか、グレゴリオ聖歌を聞いたサン・ドミンゴ・デ・シロス修道院など数多くの教会や修道院を詳しい解説を聞きながら見学できた。

民博名誉教授の大森康宏先生と特別展「聖地・巡礼」の映像に出演したフランス人巡礼者ミッシェル・ラヴェドリンさんの案内で巡礼路を実際に歩くという経験もできた。ピレネー越えは雨の中、イバニェッタ峠を登った。パンプローナ郊外のベルトン峠の丘陵地を外国人巡礼者に混じって歩いた。ブルゴス郊外では、広大なメセタ平原をつらぬく麦畑とアマポーラの赤い花の咲くまっすぐな道を10キロメートルにわたり貝殻の道標に導かれて歩いた。

最後の「ゴソの丘」からサンチャゴ大聖堂に向かって歩いたことも印象深く、すばらしい体験であった。2週間の研修の旅は内容が濃密で、毎日があっというまに過ぎてしまった。

これから資料や記録写真の整理をしっかりしておきたい。

第54回体験セミナー シリーズ「巡礼(2)」 熊野信仰・熊野詣の成立 ─ ―日本人の聖地信仰のルーツをさぐる) 2泊3日

第54回体験セミナー シリーズ「巡礼(2)」 熊野信仰・熊野詣の成立 ─ ―日本人の聖地信仰のルーツをさぐる

2007年5月18日(金)~20日(日) 2泊3日

熊野信仰の歴史は古く、神話時代にまでさかのぼります。聖地としての熊野は上下・道俗の身分を問わず、そして女性をも拒まず受け入れてきました。

そうした日本を代表する山岳霊場、熊野の歴史をたどり、その信仰を全国的に広めた山伏や熊野比丘尼の活動などをとおして熊野信仰・熊野詣がどのように成立・展開したのかを考えます。 じっさいに古道をあるいて史跡・社寺を訪ね、人々の熊野への想いを体験してみませんか。

第347回 現代社会の宗教・信仰(1) フランスにおけるイスラーム

演題
現代社会の宗教・信仰(1)
フランスにおけるイスラーム

内容
フランスには300万から400万のムスリムが住み、さまざまな形で差別を受けてきました。文化的他者を統合することは民主主義の試金石といえます。中央集権的なフランスはそれに成功するのでしょうか。フランスの事例をとおして21世紀の国家と宗教について考えてみましょう。

※講演会終了後、講師の先生との懇談会をおこないます。(約1時間)当日、講演会受付にてお申込みください。

講師
竹沢 尚一郎(国立民族学博物館教授)

日時
2007年5月5日(土) 14時~15時30分

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料

第346回 特別展「聖地・巡礼」関連 聖地・巡礼 ―視覚と現実のはざま―

演題
特別展「聖地・巡礼」関連
聖地・巡礼 ―視覚と現実のはざま―

内容
映像の特色はその場の様子の全体をとらえることができる点にあり、目にみえない「聖なるもの」を記録するうえでおおいに力を発揮します。しかし、記録映画として完成したものからはやはり抜け落ちてしまう部分があります。取材や資料収集でのエピソードなどをとおしてそうした記録の裏側にも目を配りつつ、「聖なるもの」を映像で記録することの意味について考えてみましょう。

※講演会終了後、特別展見学会をおこないます。(約1時間)当日、講演会受付にてお申込みください。

講師
大森 康宏(国立民族学博物館教授)

日時
2007年4月7日(土) 14時~15時30分

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料