2008年国立民族学博物館 巡回展示 各地で開催

長崎県美術館 企画展「世界大風呂敷展」(終了)
石川県立歴史博物館 夏季特別展「世界大風呂敷展」(終了)
島根県立古代出雲歴史博物館 特別展「聖地★巡礼」(終了)

「世界大風呂敷展」では、世界24カ国から蒐集した色鮮やかな包み布や日本の伝統的な染めや刺繍の技法でつくられた風呂敷、また、地元加賀地方の風呂敷など、約150点を展示します。この展覧会は、2002年秋の民博での開催以来、これまで日本各地を巡回してきました。1月27日から長崎県美術館で開催。環境保護や日本の伝統文化の継承などで、近年、注目をあびている風呂敷の世界をお楽しみください。

「聖地★巡礼」展は、昨春(2007年)、民博特別展として開催されたばかりの展覧会です。本展覧会では、ローマ、エルサレムと並ぶキリスト教三大聖地のひとつサンチャゴ・デ・コンポステラへの巡礼をはじめ、奇跡の泉として有名なルルド、さらに四国お遍路さんや恐山といった日本の聖地巡礼などの映像を中心に紹介します。今回は民博開催時の資料に新たな資料を追加し、日本最古の聖地のひとつ“出雲”において、より身近なものとしての「聖地」、「巡礼」について考えていただければと思います。


長崎県美術館
企画展 「世界大風呂敷展 ─ 布で包むものと心 ─」

会期
2009年1月27日(火)~3月22日(日) 〈休館日:2/9(月)、2/23(月)、3/9(月)〉
開館時間
午前9時~午後8 (入館は午後7時30分まで)
会場
長崎県美術館 企画展示室
入館料
一般 900円(800円)
大学生・70歳以上600円(500円)
高校生 400円(300円)、
中学生以下
無料 ※( )は前売および20名以上の団体料金 「国立民族学博物館友の会」会員は団体料金で入館できます。
主催
長崎県美術館
KTNテレビ長崎
国立民族学博物館
財団法人千里文化財団
特別協力
宮井株式会社
協力
裏千家長崎支部 長崎雑貨たてまつる
後援
長崎県 長崎県教育委員会 長崎市教育委員会 長崎県立長崎図書館 長崎市立図書館 日本きもの連盟長崎支部 長崎新聞社 西日本新聞社 朝日新聞社 毎日新聞社 読売新聞長崎支局 NHK長崎放送局 長崎ケーブルメディア エフエム長崎
助成
独立行政法人日本万国博覧会記念機構
協賛
ガーデンテラス長崎ホテル&リゾート


石川県立歴史博物館
夏季特別展 「世界大風呂敷展 ─ 布で包むものと心 ─」

会期
2008年7月19日(土)~9月7日(日) 〈会期中無休〉
開館時間
午前9時~午後5時 (入館は午後4時30分まで)
会場
石川県立歴史博物館 特別展示室
入館料
一 般 700円(560円)
大学生 550円(440円)
高校生以下 無料
※( )は20名以上の団体料金 「国立民族学博物館友の会」会員は団体料金で入館できます。
主催
石川県立歴史博物館
国立民族学博物館
財団法人千里文化財団
共催
北國新聞社
特別協力
宮井株式会社 ゑり華
助成
独立行政法人日本万国博覧会記念機構
後援 NHK金沢放送局 北陸放送 テレビ金沢 金沢ケーブルテレビネット エフエム石川 ラジオかなざわ ラジオこまつ ラジオななお


島根県立古代出雲歴史博物館
特別展 「聖地★巡礼 ─ 自分探しの旅へ ─」

会期
2008年7月26日(土)~9月15日(月・祝) 〈会期中の休館日は8月19日(火)〉
会場
島根県立古代出雲歴史博物館 特別展示室
観覧料
一 般 1,000円(800円)
大学生  500円(400円)
小中高生 300円(240円)
※( )は20名以上の団体料金
主催
島根県立古代出雲歴史博物館
国立民族学博物館
財団法人千里文化財団
財団法人自治総合センター
助成
独立行政法人日本万国博覧会記念機構
後援
出雲国「社寺縁座の会」 朝日新聞松江総局 毎日新聞松江支局 読売新聞松江支局 産經新聞松江支局 日本経済新聞社松江支局 中国新聞社 山陰中央新報社 新日本海新聞社 島根日日新聞社 NHK松江放送局 BSS山陰放送 日本海テレビ 山陰中央テレビ エフエム山陰 山陰ケーブルビジョン株式会社 出雲ケーブルビジョン株式会社 ひらたCATV株式会社
協賛
パナソニック システムソリューションズ ジャパン株式会社
協力
株式会社志摩スペイン村


助成:助成:日本万国博覧会記念基金

*本事業は日本万国博覧会記念基金の助成をえて実施いたします。

第360回 シリーズ「人類学者×人類学者」(1) レヴィ=ストロースとの出会い ─マルクス主義と構造主義のはざまで

演題
シリーズ「人類学者×人類学者」(1)
レヴィ=ストロースとの出会い ─マルクス主義と構造主義のはざまで

内容
レヴィ=ストロースの構造主義が日本で一世を風靡している頃、学生だった私は、その構造主義を敵視するかのような姿勢をとっていたマルクス主義人類学にはまっていました。ところが思わぬところで構造主義へとつながる考え方、トーテミズムに出会い、両者がトーテミズムに求めていたものは同じものではなかったかと、ふと気づきました。そんな私の文化人類学ことはじめをお話します。

※講演会終了後、講師の先生との懇談会をおこないます。感想や質問に答えていただくだけでなく、講師と参加者の情報交換の場にもなっています。もちろん聞いているだけでもかまいません。さまざまな話題が展開され、とても興味深いひとときです。ぜひ、一度ご参加ください。

講師
佐々木 史郎(国立民族学博物館教授)

日時
2008年6月7日(土) 14時~15時30分

場所
国立民族学博物館2階 第5セミナー室

定員
96名(先着順)

備考
■友の会会員:無料

125号 2008年 夏

機関誌
マンチェスターの戦争記念博物館のカフェテリアで
大村 次郷

新シリーズ 万国喫茶往来
第1回 紅茶とコーヒー
「紅茶の国」イギリス

文・川北 稔
写真・大村 次郷

1杯の飲みものにより、人は心身を癒し、そして人と人のあいだに会話をうみだす。世界各地の人びとは、どんなものを、どんなときに、誰と飲むのだろうか。

人とモノの流れが拡大し、さまざまな社会変化が急速に進む現在、それぞれの地域の喫茶習慣はどのような影響を受けているのか。

変わったもの、変わっていないもの、最新の喫茶事情を紹介するとともに、1杯の飲みものがうみだす空間を通して社会を考察する。 第1回は、紅茶文化が、少子・高齢化やライフスタイルの変化によって急速に変わりつつあるイギリスを紹介する。

タヒチのタタウ
文化復興とグローバル化をめぐって

桑原 牧子

タヒチ語で「タトゥー(刺青)」を意味するタタウの習慣は、1830年代にキリスト教宣教師によって禁止された。しかし1970年代、欧米での流行とともに復活し、80年代の太平洋諸国の独立にともなう民族アイデンティティの再構築と文化復興運動により、タヒチの伝統文化として再認識されている。

朝食に暮らしあり12
1460回の朝食
セネガルの暮らし
三島 禎子

サウディ・アラビアのラクダ・レース
現代に浮かびあがる、アラブ社会のネットワーク

縄田 浩志

サウディ・アラビアで年に一回おこなわれる文化祭典「ジナドリーヤ」。そこでは、大規模なラクダ・レースが開催される。ラクダ・レースにかかわる人とラクダの背景を見ていくと、アラビア半島とアフリカ大陸の、紅海をはさんだアラブ社会の交易ネットワークが浮かびあがってくる。

朝メシ前の人類学
フィールドでうまれる対話 第5回
子どもたちの眼って、どうしてあんなにキレイなんでしょう?
文・松田 凡
写真・水井 久貴
絵・中川 洋典

海人万華鏡第12回
海の彼方をめざして 星と風に導かれる海人
living beneath the stars navigating the oceans
文・あん・まくどなるど
写真・礒貝 浩

世代文化を考える
韓国の三八六世代とは何か

太田 心平

1980年代、韓国の民主化運動において牽引役として活躍した世代は、今も政治をはじめ社会に影響を与え続けている。この世代を「三八六世代」と呼び、独特の世代感情をもつ人びととして異化している。韓国において「世代」がどのような意味をもつのだろうか。

本で会いましょう24
『女乗物』
保存科学の手法で探る華麗な装飾の実態
日高 真吾さん(インタビュー)

書架はいざなう
読んで旅するインドの時空
三尾 稔

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

【地域】
東アジア(日本、韓国)
西アジア(サウジアラビア)
南アジア(ネパール)
オセアニア(フランス領タヒチ)
東アフリカ(エチオピア、スーダン)
西アフリカ(セネガル)
西ヨーロッパ(イギリス)

第83回 【座談会】 街角から見たウズベキスタンの過去と現在

演題
【座談会】 街角から見たウズベキスタンの過去と現在

内容
『広辞苑』では、嗜好品をつぎのように定義づけています。「栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るための飲食物。酒・茶・コーヒー・タバコの類」。はたして、嗜好品についてのこの定義は充分なものといえるのでしょうか。嗜好品の起源や歴史をみるかぎり、嗜好品のもつ社会的意味は『広辞苑』の定義以上におおきいとおもわれます。
嗜好品の人類史的意味について考えてみます。

講師
加藤九祚(国立民族学博物館名誉教授)、
大村次郷(写真家)
コーディネーター
西岡圭司(『季刊民族学』編集長)

日時
2008年6月22日(日) 14時~16時

場所
たばこと塩の博物館1F視聴覚ホール

定員
80名(申込先着順)

備考
■友の会会員:無料

第72回 民族学研修の旅 少数民族の村ですごす ─ ─雲南省 ナシ族・ペー族を訪ねて

第72回 民族学研修の旅 少数民族の村ですごす ─ ─雲南省 ナシ族・ペー族を訪ねて

2008年6月14日(土)~6月21日(土) 8日間

特別展「深奥的中国」の開催と関連した「民族学研修の旅」を開催します。

今回の旅では、中国西南部に暮らす少数民族のなかからナシ族とペー族の村を訪ね、彼らの暮らしに実際にふれていただきます。

訪問するナシ族の村では、人びとの手でトンパ文化を再生する取り組みが今おこなわれています。トンパと呼ばれる宗教職能者のなかでも数少ない高位の「大トンパ」が、実際に儀礼をおこないながら、トンパの知識を伝承していく「トンパ村」が今年開設されます。ここを一般公開前に特別にご案内いただき、彼らの取り組みについてリーダーの方から直接お話をうかがいます。ナシ族の人びとが暮らす村では紙漉の作業を見学するなどゆっくりと過ごしていただきます。

また、ペー族の村・周城では、同行講師の知人宅を訪問します。伝統的な家屋の内側にある中庭など通常の観光コースとはひと味違う、人びとの日常の暮らしを垣間見ることができます。村の廟でおこなわれるお祭りにも参加します。村での時間を過ごしながら、ペー族のくらしの感覚にふれてみましょう。

その他、世界文化遺産に登録された麗江の街並みやシャングリラのチベット寺院なども探訪。オリンピックなどを控え大きく変わりつつある中国において、少数民族の人びとの生活はどのような状況にあるのか。今の暮らしを知るなかで、観光開発と民族文化・伝統文化の保持・継承のあり方についても一考する旅です。


第72回 少数民族の村ですごす-─雲南省 ナシ族・ペー族を訪ねて 実施報告

特別展「深奥的中国-少数民族の暮らしと工芸」でとりあげられた中国少数民族を訪ねる民族学研修の旅を実施。25名の参加者が、雲南省の大理、麗江、シャングリラにてぺー族、ナシ族、チベット族の人びとの暮らしを垣間見ました。


大理ぺー族自治州博物館を講師の解説で見学


湖を船で渡り、ぺー族の定期市へ


市場には工芸品や食料品、日常雑貨、軽食などがならぶ


参加者の平岡美子さんから旅の感想をいただきました。

大理ペー族の村「周城の絞り藍染」を憂う  周城の村役場で書記の方から「周城の絞り藍染が村おこしにつながり、村の経済発展に貢献をし、1994年、2005年全国模範村として表彰されたが、現在は伸び悩んでいる」という話を聞きました。今わが国において、このような伝統工芸は和の見直し、スローライフの提唱のもとに人々の関心がたかまり、また海外の民芸がフェアトレードの名の下に保護されて、その発展に協力の姿勢ができつつあるのに、何故という思いをもちました。

その後、龍泉寺で行われている「単刀赴会」の宗教行事を見学。寺に着いたときお寺の境内に着飾った女性たちが行事のはじまるまで、談笑したり、木綿の布に絞りをしていました。彼女たちの頭飾りは、刺繍や絞り染めで、また絞りに刺繍と手の込んだものがみられました。(写真1)絞りが彼女たちの身を飾ったり、生活の一部であることに、朝、村役場で聞いた話が頭の中にひっかかりましたが、この後の藍染の工房見学に期待を持ちました。

午後、藍染の工房見学で、最初に目に付いたのは藍草である板蘭根(キツネノマゴ科。板藍根とも言う、和名では琉球藍)。庭にあり、その葉を浮かべたお茶でわれわれを歓待してくれました。順に、下絵を布にうつす男性が作業する絵刷り(写真2)、絞り(年配の女性)、木の樽での男性が染めていました。(写真3)干し場と見学の場所の移動もなしに目をずっと動かすだけの距離でした。絞りをしている女性たちの手の動きは早く、雨の中暗い(写真4)半室内でも手の動きは留まることなくこの絞りに携わっている年月を感じました。しかし…染め液も水っぽく、板藍根では泥藍をつくり発酵している状態で染めるのがあたりまえで、こんなしゃぶしゃぶの液ではありません。…これは本物の藍染ではなく合成藍だと思いました。

伝統工芸を生かし、マーケットに答えていくには、手絞り・手染めという手仕事では駄目で、その過程に伝統的な技術・デザインを生かすことにあります。周城の絞り藍染は染める作業に大量生産をめざすために天然藍から合成藍に変わり、また前日、喜州の「巌家」の庭にほしてあった赤・緑・茶・藍の大きな染布(写真5)も同じことだと思います。一度化学染料の簡易さ・使い易さに慣れてしまうと、もう一度伝統的な染め方に戻るのは難しいと思われますが、いいものを創る気持ちを持てば必ずできると思います。

周城の絞り藍染の90%が日本に輸出されているといいます。この絞り染めが日本のどこに売られているのか、この絞り染めにかかわっている人たちは知っているのでしょうか。(中略)村の女性たちの髪飾りの素朴であたたかみのあるデザイン、観光ガイドのベストなど生活の中にあってその美しさがあります。デザインも生活の中から生まれてくるパターンがいい。染め上がりの美しさを大事にしてほしい。周城・大理を訪れる観光客に価格ダウンをして、売り込む姿はこの絞りをしている女性たちにとってよいことではなく、このままいくと後継者つくりが難しくなると思いました。早く軌道修正がおこなわれることを願います。


写真1 周城「単刀赴会」の女性の頭かざり


写真2 藍染 絵刷り


写真3 藍染 染め


写真4 絞り作業


写真5 喜州の「巌家」で見た染布

撮影:平岡 清さん