第81回 民族学研修の旅 ミャンマー・タバウン月の祭りを訪ねて ─ ─仏教と精霊ナッの儀礼

第81回 民族学研修の旅 ミャンマー・タバウン月の祭りを訪ねて ─ ─仏教と精霊ナッの儀礼

2013年3月19日(火)~3月28日(木)10日間

ミャンマーの新年は4月中旬頃です。3月はミャンマーの暦で1年の終わりの月にあたり、タバウン月とよばれます。タバウンにはミャンマー最大の都市、ヤンゴンにあるシュエダゴン・パゴダ祭りがおこなわれるほか、各地の町や村でもパゴダ(仏塔)祭りがおこなわれます。さらに、精霊ナッの大きな祭りも見られる、とてもにぎやかな季節です。

精霊ナッの信仰
ミャンマーの人びとの大多数は敬虔な仏教徒です。しかし、彼らの日常生活には折にふれて精霊ナッが登場します。家の隅の柱につるされたココヤシの実は家を守るナッです。町や村にはそれらを守るナッが、路傍や大木の下の小さな祠にまつられています。人びとがお供えをして願い事をする姿が見られることもあります。私たち日本人にとってちょうど「カミ」さまのようなものでしょうか。仏教では仏陀以外の超自然的な存在を信じ、それらに関わることは好ましくないとされています。しかし、仏教がおもに来世への願いに関わるのに対し、ナッは現実の生活のさまざまな願い事をかなえてくれる存在です。

今回の旅はこのナッ信仰の「聖地」を訪ねます。マンダレーの近くにあるタウンビョンと、有名な仏教遺跡パガンから少し離れたところにあるパカーンなどです。祭りにはミャンマー全土から多数の霊媒(ナッカドー)が集まり、色彩豊かな衣装とにぎやかな音楽とともに、ナッに踊りを奉納します。興味深いことにパカーンのナッは大酒飲みでギャンブラーと伝えられています。このような仏教の教えに反する不道徳な存在が信仰の対象とされているところに、ミャンマーの文化のおもしろさや奥深さを垣間見ることができます。

また、ミャンマーの仏教の聖地シュエダゴン・パゴダの満月の祭りにも参加します。さらに、多くの仏塔、僧院が立ち並ぶパガン遺跡、マンダレーの世界一大きな経典、鐘、パゴダなどもあわせて訪ねます。そこでは「たてまえ」の宗教に注がれる信仰のエネルギーに圧倒されることでしょう。

今、ミャンマーは大きな転換点にあります。そうしたミャンマーの現実の姿、人びとのくらしと密接に結びついた信仰のかたち、そして伝えられてきた歴史のあとをたどることで、ミャンマーという国のかたちを一緒に考えてみたいと思います。


第81回 ミャンマー・タバウン月の祭りを訪ねて-─仏教と精霊ナッの儀礼 実施報告

今でも脳裏にうかぶのはパゴダの数と大きさ。そして パゴダや仏像に、時にはもとの形が分からなくなるほどに 金箔が貼られていたり、カラフルな電飾で彩られてまばゆいば かりに輝いていたことです。

仏教の祭りや得度式のほかに精霊ナッの祭りも見学しま した。猛烈な砂埃の中、ボートや牛車に揺られてようやく 到着した村で霊媒師の奉納の踊りを見学したり、神像が祀ら れている神殿を見せていただきました。イラワジ川を船で 一日かけてくだりながら、沈む夕日を眺め、見聞きした出来 事を咀嚼したり、目に入るものは何でも紹介しようという 同行講師のレクチャーに耳を傾けた贅沢な10日間でした。


タウンビョン村のナッの神殿にて


朝早くからお参りの人が絶えないシュエダゴン・パゴダの満月の祭りの様子


イラワディ川を丸一日かけて船で下りました。(マンダレーからバガンまで)船に乗るのも一苦労