第76回 民族学研修の旅 シベリアの森を歩く ─ 少数民族ナーナイの村を訪ねて
2010年7月26日(月)~7月30日(金)
アムール川流域に暮らす少数民族ナーナイを訪ねます。針葉樹林の森に暮らし、伝統的に狩猟生活を営んできた人びとの文化を学びます。森や大自然に捧げられた祈りや歌、白樺を利用してつくられたカヌー、サケの皮でつくられた衣服など森と暮らす人々の生活を学びます。 針葉樹林や大河アムール川の散策、そして森と川のめぐみたっぷりのお食事なども楽しみましょう。
第76回 シベリアの森を歩く-少数民族ナーナイの村を訪ねて 実施報告
ハバロフスクからアムール川沿いに北上すること500キロ。少数民族ナーナイの村を訪ねました。村では、人びとのあたたかいもてなしを受けました。舞踊などを披露してもらったり、伝統工芸の体験などもさせてもらいました。食事も私たち日本人にもなじみやすい味で、名物の鯉や鮒のスープにハンバーグ、赤シカの肉団子、とれたての野菜や蜂蜜などをいただきました。 参加者からの感想を紹介します。
<小川朋海さん>
ロシアは、私のイメージよりもずっと明るい国でした。ハバロフスクだったからでしょうが、旧ソ連の名残もあるけれど、BRICSというか日本には少なくなっている元気さがあったような気がします。古い教会がなかったのが残念でなりません。ナーナイ地区は驚きの連続でした。穴をほっただけのトイレ、舗装されていない道路なのに家の中ではテレビが見えて、生活も私たちとあまり変わらない快適そうな暮らしをしていることなど。でも伝統は受け継がれていって欲しいと思いました。
<橘ミワさん>
少数民族ナーナイ村民あげて、犬も猫も総出での歓迎に驚き。今更ながら失われつつある古き良き日本の昔を思い出しています。
<枡野玲子さん>
コンドン地区、トロイツコエ地区のナーナイの人たちは魚皮や白樺の樹皮を原材料として衣類、靴、器などを製造していることを実感。見るだけでなく体験までさせていただいて、彼らの生活の仕方やあり方が生業─漁撈と植物の採集─と深く関わっていることがよくわかった。体験した魚皮のなめしによって、魚皮を使ったものを作るのは気が遠くなるほどの時間と労力、特に体力が必要だと痛感した。
<大城順次さん>
旅行3日目、同行講師のフィールド・コンドン村に到着するなり、ナーナイ民族伝統の儀式や舞踏などの大歓迎セレモニーに感動する。昼食後、雨天のため室内に場所を変えて、様々な民族伝統の舞踏・演劇ショーを見学する。この日のために、長期間にわたり村人たちが準備・練習を重ね続けてくれたであろうことを想うと、強く心を打たれた。我々の見た、ナーナイ人の舞踊は現代的にショーアップされてはいたが、シャーマンの踊り、結婚の踊りなどとても美しく楽しいものであった。
3日目のコンドン、4日目のトロイツコエ両村で民族芸術・工芸等の体験学習は今回の旅の圧巻であった。なかでも、魚皮の衣服の製造実演と説明受け、我々も伝統の器具を使って、揉んだり、挟んだり、堅い表皮を剥いだりすることなどで、魚皮を柔らかくする方法を体験したことがその一例。「そうか! このような道具を使い、このようにして堅い魚皮を柔らかくしていたのか」との発見の喜びもあった。
今回の研修旅行はナーナイ民族の人たちと交流する時間が多く、得難い体験をするとともに、日本人のルーツの一端に想いを巡らすことができた。短期間ではあったが、まことに楽しい研修旅行であった。