第59回体験セミナー 京都町家にくらす ─
2010年3月13日(土)10:00~14:30
「おばんざい」をはじめ、京都の町中のくらしぶりを紹介した大村しげ。生活の記録者という自覚のもとに書かれた数多くのエッセイは、没後10年を経た今でも読み継がれ、「後の研究のために」のこされた生活道具一式は民博に寄贈されています。
京都の町中のくらしに受け継がれてきた「しまつ」をつける生き方を、京町家の杉本家住宅を訪ね、体験します。杉本家住宅は江戸から明治にかけての家屋や生活道具がよく保存されていることから京都市の有形文化財にも指定されています。
じっさいに文化財に暮らしながら町家文化を伝えるという活動についてもお聞きします。
<プログラム>
講演と杉本家邸内の説明「町家のくらし ─ 商人の精神息づく暮らし ─」
杉本歌子:(財)奈良屋記念杉本家保存会 学芸員・古文書調査主任
昼食 おばんざい
料理・解説 杉本節子:(財)奈良屋記念杉本家保存会事務局長、料理研究家
講演「記録者としての大村しげ ─ 「しまつ」の思想が語るもの」
横川公子:武庫川女子大学教授
第59回 京都町家にくらす- 実施報告
京町家、杉本家住宅にて開催したセミナーは、奈良屋記念杉本家保存会の学芸員杉本歌子さんによる邸内の解説から始まりました。部屋のしつらいひとつをとっても引き算の考えでシンプルにつくられており、季節や慶弔などを問わず臨機応変に対応できる工夫が凝らされているというお話しが印象的でした。
昼食におばんざいをいただいたあと、武庫川女子大学の横川公子先生に大村しげさんの生き方や思想を紹介していただきました。大村さんの「しまつ」の考え方や杉本さんの日々の暮らしから、京都という都市で培われた生活の伝統が、現代の私たちの生活にも何かヒントを与えてくれるという魅力をあらためて感じました。
参加者からの感想を紹介します。
佐野滋さん
伝統的な京の町家は、一言で言えば日々のくらしの総合芸術である、京都の町衆はそれを創出する“文化力”を何世紀にもわたってもちつづけて来たことを実感しました。
常田泰典さん
京都というと古いものを残すというように考えられがちですが、伝統を伝えるだけでなくその時々に応じて柔軟に対応し、新しいものも取り入れる進取の精神があるとよく言われます。杉本家の方々の活動にもその精神が生きていることを感じました。