145号 2013年 夏

機関誌
トンレサープの少年
西岡圭司

特集 水を考える

飲料用はもちろん、豊かな水産物や農産物をもたらすものとして、人の暮らしになくてはならない水。であるからこそ古来人びとは、信仰の対象とするなど水とのかかわりを大切にしてきた。しかし水資源に恵まれた現代の日本に暮らす我われは、ときに水不足を心配しながらも、概ね「あって当り前のもの」として水をとらえ、贅沢な(ときに不遜な)態度を示してきた。 その一方世界には気候変動や行き過ぎた開発により、安全な飲料水の確保すら困難になっている地域が多く存在し、深刻な健康被害や生存そのものが脅かされる状況が生まれている。

序 水のあるくらし ―大切なもの・恐ろしいもの  鳥越皓之

1章 古来の知恵とその変容

メソアメリカの水  八杉佳穂
ナイルのほほえみと叫び  加藤博
オアシスの入浴事情  鷹木恵子
聖なる河とミネラルウォーター  杉本良男
琵琶湖の民俗 ―集落内の水路  市川秀之

2章 持続的利用を目指して

国際河川の管理を巡って ―中欧の市場経済化とEU加盟を中心に  森和紀
煮えた湯のなかの蛙 ―アフリカ・サヘル地域における水と生命  大山修一
アラル海の消失とその再生に向けて  川端良子
グローバル化と小さな村 ―海を越えるためのリアリティ  竹川大介
分断された人と水源  久保正敏

紀州有田川流域の仏像

写真=藤森武
文=芝野敬通

世界をさわる 第4回
触れることから生まれる武道

私たちは日常において、視覚と聴覚に頼って情報を取り込むことが多い。日常生活にとどまらず、博物館や美術館という鑑賞・学習の現場でも「見学」「観覧」といった視覚中心の鑑賞方法が提示されることが多い。しかし、ものの本質を知る手段は、視覚や聴覚に限るのだろうか。本連載では、五感のうちでもとくに「さわる」行為に着目し、「見える」「聞こえる」という常識にとらわれない、あらゆる角度から対象を理解する〝手法〟を提案したい。「さわる」行為には、世界を知るためのさまざまな可能性が秘められている。

無目勝流武道の極意を求めて  広瀬浩二郎
触れることから生まれる武道  嶋本勝行

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【地域(国)】
オセアニア(ソロモン諸島、オーストラリア)
アメリカ(メキシコ、グアテマラ)
ヨーロッパ(ルーマニア、ドイツ、チェコ、スロバキア、ハンガリー)
アフリカ(ニジェール、ナイジェリア)
西アジア(エジプト、チュニジア、ウズベキスタン、カザフスタン)
東南アジア(カンボジア、ラオス)
南アジア(インド)
東アジア(日本、中国)

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【執筆者(五十音順。肩書は発行当時のもの)】
市川 秀之(いちかわ ひでゆき 滋賀県立大学教授)
大山 修一(おおやま しゅういち 京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科准教授)
加藤 博(かとう ひろし 一橋大学大学院経済学研究科特任教授)
川端 良子(かわばた よしこ 東京農工大学准教授)
久保 正敏(くぼ まさとし 国立民族学博物館教授)
芝野 敬通(しばの としみち ライター)
嶋本 勝行(しまもと かつゆき 豊中・正泉寺住職、大阪府合気道連盟理事長)
杉本 良男(すぎもと よしお 国立民族学博物館教授)
鷹木 恵子(たかき けいこ 桜美林大学教授)
竹川 大介(たけかわ だいすけ 北九州市立大学教授)
鳥越 皓之(とりごえ ひろゆき 早稲田大学人間科学学術院教授)
西岡 圭司(にしおか けいじ 本誌編集長)
広瀬 浩二郎(ひろせ こうじろう 国立民族学博物館准教授)
藤森 武(ふじもり たけし 写真家)
森 和紀(もり かずき 日本大学文理学部教授)
八杉 佳穂(やすぎ よしほ 国立民族学博物館教授)