139号 2012年 冬

機関誌
南方熊楠邸にそびえるクスノキの大木
藤森 武

特集 南方熊楠と民俗学

現代社会は、国境を超える人とモノの移動が複雑化し、自他への深い理解が求められている。さらに、巨大地震や豪雨が多発するなど、自分たちを取り囲む自然とのあいだで、現状とは異なった関係構築の必要性も高まっている。 しかし、我々は、かえって思考が「内向き」になり、自己防衛的態度に陥り、問題解決への積極的な努力を回避してしまっているのではなかろうか。 本特集では、国境・分野の垣根にとらわれることなく、あらゆるものの姿を求め続けた南方熊楠に焦点をあてる。 多くの問題を抱える現代社会は、彼の探究心、行動力を、まさに必要としているものではなかろうか。 膨大な熊楠の思考の軌跡のうち、多分野への展開がとくに顕著な英国時代以降に焦点をあて、現代を生き抜くために必要な示唆を模索する。

特集 南方熊楠と民俗学

南方熊楠とは何者か 松居 竜五

1章 イギリス時代 地球規模の文化交流を探る

熊楠と比較民俗学 ―『神跡考』の民族誌を中心に― 志村 真幸

「英国に住む野人也」
南方熊楠、柳田國男の山人論争とジョージ・ローレンス・ゴム 横山 茂雄

東西思想への視座 ―土宜法龍への書簡を中心に― 奥山 直司

2章 田辺時代 森の多様な世界を追求する

動物の神々への感謝 ―神社合祀反対運動の思想的背景― 田村 義也

熊楠の先見 ―熊野の森と生物多様性― 加藤 真

カミ、人、自然=熊楠が求めた共生の杜 湯本 貴和

南方熊楠と熊野 安田 忠典

3章 「十二支考」 「南方民俗学」の現代的意義

「十二支考」のなかの竜 松居 竜五

犬に関する民俗と伝説 志村 真幸

「十二支考」の猿たち 鈴木 滋

人と動物のかかわりと「十二支考」 東城 義則

チュニジアの結婚式

常見 藤代

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【地域(国)】
東アジア(日本)
アフリカ(チュニジア)

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【執筆者(五十音順。肩書は発行当時のもの)】
奥山 直司(おくやま なおじ 高野山大学教授)
加藤 真(かとう まこと 京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
志村 真幸(しむら まさき 京都外国語大学非常勤講師)
鈴木 滋(すずき しげる 龍谷大学准教授)
田村 義也(たむら よしや 成城大学講師)
常見 藤代(つねみ ふじよ 写真家)
東城 義則(とうじょう よしのり 総合研究大学院大学博士後期課程)
松居 竜五(まつい りゅうご 龍谷大学准教授)
安田 忠典(やすだ ただのり 関西大学准教授)
湯本 貴和(ゆもと たかかず 総合地球環境学研究所教授)
横山 茂雄(よこやま しげお 奈良女子大学大学院人間文化研究科教授)