136号 2011年 春

機関誌
家畜の群れとともに
池谷 和信

特集 家畜と人との「意外」な関係 アジアからの地平

アジアの人びとは、古来さまざまな種類の家畜を生みだし、ともに暮らしてきた。 急速な近代化やグローバル化をへた現在、われわれの暮らし方は変容し、家畜から遠ざかってしまったかにみえる。 しかし、二〇一〇 年宮崎で発生した「口蹄疫」は、食生活のみならず、動物園が閉鎖されたり、周辺地域全体が孤立したり、さらには行政能力に批判が集まるなど、家畜がわれわれの暮らしに大きな影響力を有していることをあらためて示した。 暮らし方の変容は、家畜を遠ざけたのではなく、視界から隠してしまっただけではなかろうか。

家畜に対する視座転換 モンスーンアジアからの展望

池谷 和信

1章 南アジア

ブタの遊牧 池谷 和信 ムスリムとウシ

供犠として、家族として、ビジネスとして 南出 和余

ウシをまもる 家畜保護の思想と民間保護施設 篠田 隆

移牧と舎飼いの共存 草刈りの手間を省きつつ村に住むには? 渡辺 和之

2章 東南アジア

スイギュウ ヒトの暮らしが変わるなかで ラオス 高井 康弘

ブタと暮らす人びと タイの山村から 中井 信介

ニワトリとヒトとの「意外」な関係 タイにおける事例 増野 高司

オラン・アスリと家畜 信田 敏宏

パラワン島南部の暮らしと家畜 フィリピン 辻 貴志

3章 東アジア

暗闇のなかのヒツジ 中国 菅 豊

北上山地の牛飼いと柵をめぐる30年 岡 惠介

沖縄の市場と家畜文化 小松 かおり

定着するイノシシ飼育 黒澤 弥悦

宮崎の獣医師からみたブタと人 志賀 明

モンスーンアジアから家畜文化を問い直す 池谷 和信

マラムレシュの木造教会をめぐる

小谷 明

幾多の宗教は、それぞれに祈りの場所や、神仏の住まう場所をもっている。そのたたずまいは、洋の東西を問わず分類された芸術様式でいろどられている。ヨーロッパのキリスト教圏だけを見ても、カトリック、プロテスタント、東方正教会など各宗派の建築物は多種多様だ。正教各派だけでもギリシャ正教、ロシア正教、ルーマニア正教などなどその数は多い。そうしたなかで、際立ってユニークな存在のひとつとして、一七~一八世紀にかけてルーマニア北部マラムレシュ地方に建てられた「木造教会群」がある。

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信

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【地域(国)】
南アジア(バングラデシュ、インド、ネパール)
東南アジア(ラオス、タイ、マレーシア、フィリピン)
東アジア(中国、日本) ヨーロッパ(ルーマニア)

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【執筆者(五十音順。肩書は発行当時のもの)】
池谷 和信(いけや かずのぶ 国立民族学博物館教授)
岡 惠介(おか けいすけ 東北文化学園大学教授)
黒澤 弥悦(くろさわ やえつ 東京農業大学教授)
小谷 明(こたに あきら 写真家)
小松 かおり(こまつ かおり 静岡大学准教授)
志賀 明(しが あきら シガスワインクリニック)
篠田 隆(しのだ たかし 大東文化大学教授)
菅 豊(すが ゆたか 東京大学東洋文化研究所教授)
高井 康弘(たかい やすひろ 大谷大学教授)
辻 貴志(つじ たかし 国立民族学博物館外来研究員)
中井 信介(なかい しんすけ 日本学術振興会 特別研究員PD)
信田 敏宏(のぶた としひろ 国立民族学博物館准教授)
増野 高司(ますの たかし 国立民族学博物館外来研究員)
南出 和余(みなみで かずよ 桃山学院大学講師)
渡辺 和之(わたなべ かずゆき 立命館大学非常勤講師)