132号 2010年 春

機関誌
アレクサンドロスの妃ロクサネの故郷、バクシュヴァル。ウズベキスタン
大村 次郷

特集 アレクサンドロスの道

写真提供・大村 次郷

アレクサンドロスの道を辿ろうとする者は、必ずや歴史と虚構のはざまをさ迷う。 悠久の昔にユーラシアを駆け抜けた若きマケドニア王の幻影を求め、大村次郷氏が大陸各地で捉えた風景に思いをはせるが、その実像を求めれば求めるほど、積もり重なる遺構・文献・伝承の層の厚さに眩惑する。アレクサンドロス像の輪郭は、すでにその生前から今日にいたるまで、常に変容し続けてきたのである。

アレクサンドロスの死後、彼の版図を越えたさらに広範な地域の人びとが、大王について語り継いできたものは何か?我々が今日アレクサンドロスに見出すものは何か?この探求の道を旅するとき、ユーラシア諸民族の歴史そのものが繰りひろがる。

I章 アレクサンドロス帝国の実像 森谷 公俊

アレクサンドリアの現在 赤堀 雅幸

II章 変容するアレクサンドロス像

ギリシアからの逸脱 『アレクサンドロス物語』
 橋本 隆夫

イスカンダルとズ・ル・カルナイン

アラビアにおけるアレクサンドロス 蔀 勇造

破壊者から英雄へ

イランにおけるアレクサンドロス伝承 山中 由里子

呪われたもの

ゾロアスター教徒のアレクサンドロス観 山本 由美子

東からの風 中央アジアのアレクサンドロス余話
 加藤 九祚

中国に伝わったアレクサンドロス伝承
 山中 由里子

諏訪の御柱祭

文・織田 竜也
写真・高原 一光

大勢の人間が取り巻く大木が急坂を滑り落ちる。今年は諏訪の御柱の年だ。現地では「七年に一度」と称されるがこれは数えの表現で、干支でいえば寅と申、「六年に一度」おこなわれる祭りである。正式には「式年造営御柱大祭」というが、「オンバシラ」といえば全国的に通用する。メディアで報道される大木が急坂を滑り落ちるシーンは下社「木落し」のものだが、御柱祭はそれだけにとどまらない。そもそも諏訪大社がどういう神社なのかですら、意外と知られていないものだ

再見細見世界情勢15
東ティモール
グローバル化時代の国民国家建設
松野 明久

ラテンアメリカのカーニバル
多様な祝祭空間を漂う

白根 全

ラテンアメリカでおこなわれるカーニバルは、我々がイメージするより多種多様である。おなじみのリオのカーニバルのように、ヨーロッパからの移住者が持ち込んだカトリックの謝肉祭が原型のものもあれば、先住民により長く受け継がれてきた名も知れないものもある。さらにラテンアメリカからの移住者が多いアメリカ合衆国では、少し「アメリカナイズ」されたカーニバルが彼らによりおこなわれている。ラテンアメリカ諸国を中心に、多様なカーニバルを俯瞰し、その魅力を紹介する。

国立民族学博物館ミュージアム・ショップ通信