特集 国立民族学博物館友の会25年の歩み
20世紀が、イデオロギーにもとづく政治システムの時代であったならば、今世紀は諸民族が自己を主張する時代といわれる。1977年に開館した国立民族学博物館は、豊富な民族学の研究成果を展示に反映させつつ、それまでにない新しい世界観を提示した。今日の混沌とした状況のなかで、その役割はますます重要性を増している。「国立民族学博物館友の会」は、国立民族学博物館と市民をむすぶ橋渡し役としてさまざまな活動をおこない、ことし25周年をむかえた。
人間賛歌 私たちは出会う
谷川俊太郎
対談
世界が民族学的知識をもとめる、いまこそ
石毛直道
梅棹忠夫
国立民族学博物館開館と同時に発足した「国立民族学博物館友の会」はことし25周年をむかえた。国立民族学博物館は当時、時代を先取りするあたらしいコンセプトと展示で注目をあつめ、同様に「友の会」も国内ではそれまでにないユニークな組織としてたくさんの会員から共感をいただき、活動を開始した。今日まで25年におよぶその活動をつうじて、民族学の普及、そして国立民族学博物館の支援団体として「友の会」が果たしてきた役割と意義を考える。
創刊25周年記念企画・四半世紀ののちに 1
「夜明けの大陸」アフリカの未来
米山俊直
内戦がつづくコンゴ(旧ザイール)、かつて調査したテンボ人の地域で、携帯電話など小型機器の電子部品に不可欠の金属タンタルが産出するという。1970年代、精力的にすすめたテンボ人研究は、地図の上では針金でついた小さい点のような少数民族の研究だったが、それは同時にアフリカ大陸、アフリカ人全体をみるための手段だった
メイキング・オブ・2002年ソウルスタイル
朝倉敏夫・佐藤浩司・笹原亮二
2002年春、民博にソウルが出現した。家族5人が生活する高層アパートの住宅、屋台がならぶ酒場の喧噪、儒教の国の伝統をうけつぐ小学校の教室、物売りの声で活気づく市場。おとうさん、おかあさん、おばあさん、そして子どもたち…。李さん一家をとおして、ソウルのいまを紹介する特別展「2002年ソウルスタイル」は、いかに実現したか
ソウルのくらしを「あるがまま」に
朝倉敏夫さんに聞く「2002年ソウルスタイル」展
ソウルに暮らす家族の生活財を一括収集し、あるがままに紹介する今回の展示は、李さん一家だったからこそ実現した。一家の住居を中心にひろがる展示空間がめざすもの
ものいわぬ物に生命の光りをともす
佐藤浩司さんに聞く「李さん一家の生活財調査」
物にはそこにあるべき歴史の必然があり、人にはその社会で生きているための存在理由がある。それが個人の可能性をおいもとめてきた今回の調査・展示をささえる基本理念だった
ソウルにあらわれた「日本」
笹原亮二さんが語る「近い隣の国、日本」展
韓日共同の展覧会は、企画段階からさまざまな意見の食いちがいが生じた。互いが考える「日本」像をめぐる紆余曲折。その準備作業をとおして両国がみたものとは
環境と文化を考える 最終回
カラハリ先住民の“静かな”戦い
池谷和信
先祖伝来の土地が自然保護区に指定され、近年、政府から移住勧告をうけたカラハリ先住民サン。動物こそが真の食べものとみなす彼らにとって、新興住宅地での生活はうまくいくのだろうか
編みから織りへ
牧畜民ラバリの手工芸
上羽陽子
先祖伝来の土地が自然保護区に指定され、近年、政府から移住勧告をうけたカラハリ先住民サン。動物こそが真の食べものとみなす彼らにとって、新興住宅地での生活はうまくいくのだろうか
※4回連続のシリーズ「環境と文化を考える」の最終回